12A6GTY CSPPアンプが完成した。試作機から本番機へは回路的な変更が無かったのでスムーズに行った。
12A6GTYはビーム管でヒーターが12.6V0.15Aの省電力タイプ。形状が気に入ったので使いたかったがCSPPアンプでは専用のOPTが必要なためその購入資金がなかなか出せなかった。
CSPPアンプを組む人はその目的に合った出力管を決定するが、私の場合は逆で12A6GTYを使いたいがためにそれにフィットする回路を考えた。
回路は電圧増幅段をFETと3極管のカスコードとした。この回路は私が以前に製作した17JZ8 CSPPアンプや6T9 CSPPアンプやPCL83 CSPPアンプと同じ。回路的に安定なのと音色が好みなので採用した。
CSPP回路は出力段に高いドライブ電圧が必要なので、必然的に電圧増幅段の電源電圧を高くしなければならない。ブートストラップを使う手もあるが、FET-3極管カスコードに使うと効きすぎて特性が悪化してしまう。ブートストラップは正帰還の一種だから。
他にはCasComp応用回路というOPアンプと3極管の組み合わせがあるが、OPアンプ用の正負電源が必要。個人的に増幅段へOPアンプを使いたくないので試したことはない。
初段FET、次段3極管で3段構成にする案も考えたのだが結局不採用となった。この場合はブートストラップが有効だと思う。
電圧増幅段をFET-3極管カスコードとしたために他のCSPPアンプとの音色の違いを見いだせなくなってしまった。あえて3段構成でブートストラップとしたほうが音色の違いがあって差別化ができたかもしれない。
設計での出力は5.8Wだったが実機では6.3〜6.7W出ておりドライブ段でリミットしている可能性がある。ドライブ段の電源電圧を高くすれば良いのだが出力段は12A6GTYのEp maxが250Vでリミットしていて電源回路を分ける必要が生じて回路的に複雑になるのを避けたい。
ASTR-30Sは1次12kΩにおける出力容量が4W・40Hzとなっていておそらくオーバーしている。実際には余裕があるとみてやってしまっているのだが仕様に基づく出力はもっと抑えなければならないだろう。
12A6GTYはH-K耐圧が低いため、カソードに信号振幅があるCSPPではヒーター端子を個々に設け、それぞれをカソードに接続している。またヒータートランスを左右で別個にすることによりクロストークの悪化を防いでいる。
+B電圧を稼ぐために電源トランスの5.5V端子と6.3V端子を直列にして倍電圧整流して加えている。
12A6GTYのEp maxが250Vであるためグリッドにプラスバイアスをかけてカソード電圧を高くしている。カソード電圧が高くなったぶんをカソード抵抗に消費させている。プレート電流は20mAに抑えてあるのでカソード抵抗の消費電力は1本あたり0.8Wで済んでいる(SG電流は0.9〜1.0mA)。
諸特性を上記に示す。歪率5%での出力は6.3W〜6.7Wで設計での5.8Wより高くなった。オーバーオールNFBは6.3dBかけている。残留ノイズは46μV前後で低い。
周波数特性。高域-3dB点での周波数は160kHz〜165kHz。
クロストーク特性。20Hz〜20kHzでは-89dB以下。
(株)奥澤のアルミシャーシO-45でW300mm×D170mm×H50mm、厚さは1.5mm。これをダークグレーメタリックマイカで塗装した。
OPTは染谷電子のASTR-30Sをトランスケース(W71mm×D71mm×H74mm)に入れた。トランスケースは厚さ1mmの鋼板製。 それではいつものようにいろんな角度から撮った画像を掲載。
部屋の電気を消して撮ってみた。12A6GTYに綺麗な青い蛍光が出ている。これはグローではない。グローは低圧の気体中の持続的な放電現象で赤紫色が多い。
シャーシ内部。平ラグに回路を組んで、それを結線するやり方。6.2V系の配線を短くして回路をそばに配置したほうが良かった。
駄耳の私による試聴結果は、雰囲気は十分出るし繊細さや図太さもあるがCSPPアンプに共通の音色である優雅さを持っている。聴き疲れしないのでいつまでも聴いていられる。
真空管アンプの特徴である、音色に暖かさが感じられる。わざわざ旧世紀の遺物である真空管を使うのだから、それを活かした音色にしたい。原音に忠実ではないが、趣味なんだしそれでも構わない。自分好みの音が出てくれればそれでOKだ。