ARITO's Audio LabのOPT、SE-7K2Wを入手した。これは1次インピーダンス7kΩ、出力容量2Wのシングルトランスだ。ケースはW48mm×D44mm×H70mmの極小サイズ。これを使ってカワイイ4P1Lシングルアンプを製作してみよう。
シャーシは株式会社奥澤の特注品(W200mm×D130mm×H40mm)を使う。t1.0mmのアルミだから加工は容易。裏蓋付き。
回路図を上記に示す。電圧増幅部はFETとTrのカスコードで、Trのエミッタフォロアを加えたもの。4P1Lは3結とし、第1グリッドをダイレクトにドライブする。電源部は整流後にちいさなチョークコイルでリプルを低減し、FETリプルフィルタを通して+Bを供給する。
フィラメント電源は3端子レギュレータを採用。整流には普通のダイオードブリッジを使ったが、入出力電位差をあまり確保できていない。ダイオードにSBD(ex.1N5817など)を使って3端子レギュレータの入力電圧を高くしたほうが良いと思われる。
諸特性を上記に示す。高域カットオフが150kHzと高いのはSE-7K2Wによるもの。このOPTは周波数特性が公開されている。SE-7K2W No.19 (Lch) SE-7K2W No.20 (Rch) 出力は1.6W。NFBは6.3dBかけている。DFは4.5とまあまあの値。残留ノイズは0.05mVと非常に低くなった。
最終的な周波数特性。高域が伸びて凸凹が無く、両チャンネルが揃っているのは見事。
LchのNFB有り無しの周波数特性。位相補正100p有り。
RchのNFB有り無しの周波数特性。位相補正100p有り。
クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-68dB以下となった。
Lchの歪率特性。1kHzでは歪み打ち消しが効いて最低歪率が0.02%となった。
Rchの歪率特性。1kHzでは歪み打ち消しが効いて最低歪率が0.03%となった。
SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが発振には至らなかった。(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力1Vp-p、50mV/div[プローブ10:1]、20μS/div)
使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E470 OS Windows10 Home
シャーシと裏蓋の加工は自分で行った。塗装には、いつものダークグレーマイカメタリックをスプレー塗装した。ミニアンプにほぼ黒の塗装だから、いっそう小さく見える。
さて、いつものようにブツ撮りをしたので掲載する。
レイアウトはオーソドックスな配置とし、電源トランス前にちいさなチョークコイルを置いた。これはシャーシ上のデッドスペースを埋める目的もあるが、無くても特に問題ない。
シャーシ内部。平ラグを多用したためシャーシ内が込み入ってしまった。ユニバーサル基板を使えばもっとスマートにできると思う。
駄耳の私による試聴結果。4P1Lは透明感のある、雑味の無い音色なので気に入っている。ニアフィールドではスケール感がありミニアンプであることを意識させない。女性ボーカルに潤いが感じられる。拙作には必須の条件だ。
4P1Lはロクタル管で、外観は好き嫌いが分かれると思う。真空管の角度によってはフィラメントの赤熱している様子が見れる。4P1Lは2022年9月現在ではまだ安価に入手可能なので、シングルアンプを製作し音色を確かめてみるのが良いと思う。