たまたまヤフオクで71Aを2本入手した。42シングルアンプ2号機を解体して出た電源トランスがあるので、またシングルアンプを製作しようと思った。
71Aは真空管販売店でNOS品を買うと、1ペア4万円程度するようだ。ヤフオクでは中古が15,000円程前後。希少価値でどんどん値上がりしてしまった。私はST-14形状のタマが好みなので、他には傍熱5極管の42くらいしか知らない。45もそうだが同様に高価だ。
レイアウトはシンメトリー配置とし、電源トランスを前進させて後方にブロック電解コンデンサを2本立てた。このデザインは気に入っているので、拙真空管アンプには数台、このデザインを採用している。
シャーシはWATZのS-254で、W250mm×D150mm×H40mm・t1.0mmのアルミで鋼板の裏蓋付き。シャーシの加工は自分で行った。塗装はいつものダークグレーマイカメタリックで磨き仕上げとした。今回はクリアに気泡ができなかったからうまく行ったと思っている。
回路図を上記に示す。フィラメント電源にはLDOの3端子レギュレータTA4805Sを使い、SBDの1N5817で整流後の電圧を高くしている。アンプ部は電圧増幅段がいつものカスコードエミッタフォロアで71Aのグリッドをダイレクトにドライブしている。だからカップリングコンデンサは使っていない。
71Aのカソードは普通にバイパスコンデンサでGNDに落としている。+Bに接続する、いわゆる信号ショートループは、直熱管には音色的に合わないと感じている。これは好みの問題なので、本家の71A/171Aシングル・ミニワッターのようにするのが良いと思う。
電圧増幅段に使っているツェナーダイオード1N5386Bの入手が難しいようだ。1N5386BGならRSコンポーネンツにあるが25本以上の発注が必要。またマルツならDigi-Key扱いで入手可能(2022年12月現在)。若松通商にもあるみたい(2022年12月現在)。直列で180Vになるツェナーダイオードの組み合わせで良いので、代替えは可能だ。
諸特性を上記に示す。残留ノイズは0.1mV以下となっているが、フィラメントをDC点火しても71Aによってはノイズが出るものがあり、1mVを許容するなら問題ない。
周波数特性。ぎりぎり20Hz~20kHzを確保しているといったところ。OPTのT-1200は高域が伸びないし凸凹しているが、特性が揃っている。特に位相特性が揃っていないと定位に問題が出るようだ。
クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-69dB以下となっており、高域での悪化が全く見られないのはボリュームレスのためか。
Lchの歪率特性。1kHzでの歪率5%での出力は1W。110HzがOPTのコアサイズのためか悪めだが、1kHzと10kHzでは歪みの打ち消しがされているものと思われる。
Rchの歪率特性。Lch同様1kHzでの歪率5%での出力は1W。
(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div(プローブ10:1)、20μS/div)
SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが、リンギングが大きいものの発振には至らなかった。リンギングを減らすのならNFB抵抗と並列に位相補正コンデンサを抱かせるのをお勧めする。
さて、いつものようにブツ撮りをしたので掲載する。
電源トランスの上下カバーが塗装されているのは42シングルアンプ2号機(解体済)からの流用のため。
シャーシサイドには、はざいやに加工してもらったアクリル板を取り付けた。アクリル板の発注仕様についてはこちら。
ブロック電解コンデンサの固定バンドは、本当はシャーシ内から取り付けたほうがデザイン上すっきりするんだけど、平ラグに当たるので止めている。
シャーシ内部。電解コンデンサ470μF100V(黒いやつ)の取り付け場所に困ってこんなふうになってしまった。また、カソードDC電圧を半固定抵抗で調整する際、ドライバーのシャフトと電解コンデンサが干渉するのは想定外だった。
AC1次配線(白)と他の配線は遠ざける、お互いに撚ることで影響を避ける。グリッドやプレートの配線は高インピーダンスなので他の配線になるべく近づけない。
製作後に一切内部には手を入れていない。斜め配線や斜め抵抗を許しているからこんな感じだ。拘る人は水平垂直を守るんだろうなあ。
3階自室での試聴結果。音色自体は清楚そのものでいかにも普通なのだが好音質だ。透き通った輝きといった感じ。ニアフィールドで聴けば小出力でも問題ないし、低音に不満はない。
使っている抵抗やコンデンサはブロック電解コンデンサを除き一般品のみで構成している。そうであっても71Aの本来持っている音色を遺憾なく発揮しているように思われる(自社比)。