ARITO's Audio LabのSE-5K10Wをヤフオクで落札した。このOPTは1次インピーダンスが5kΩで出力容量は10W(40Hz)。そこで手持ちの6B4Gを使ってシングルアンプを製作しようと考えた。当初は2次16Ω端子に8Ωをつないで2.5kΩ:8Ωとして使おうと思ったが、こちらのWebでは5kΩで使っており、出力が5W得られるとわかってそのままでやってみることにした。
2A3(=6B4G)の特性図に5kΩのロードラインを引いてみた。動作点はEb=280V、Ip=45mA、Eg=-54Vとした。出力を計算してみると5.0Wとなった。古典直熱3極管はプレート電流を欲張ると最大プレート損失以下であってもヘタってしまうのを経験している。だから高圧小電流で動作させたほうが良いと思う。
回路図を上記に示す。電圧増幅段はいつものFET-Trカスコードで、Trのエミッタフォロア直結で6B4Gをドライブする軽いA2級だ。ただバイアスが-54Vと深く、カットオフを-120Vとすると6B4GのグリッドDC電圧を高くする必要があり、設計では76Vとした。
また、カソード電圧が130Vと高く、通常のカソード抵抗では5.9Wもの電力を消費するため、+B1(110V)により半固定バイアスとし、カソード抵抗が0.9Wの消費電力となるようにした。この回路はARITOさんの300Bシングルアンプ(PDF)を参考にさせて頂いた。
なお、6B4Gのフィラメント電源は3端子レギュレータLM350Tによる定電圧電源とした。+B1電源はFETリプルフィルタとなっているが、評価時に変更したのだが普通のCRフィルタでもよかった。
VR2はR22両端の電圧が19.4Vとなるように調整する。6B4Gのプレート電流は45mAとなる。カソード電圧の130VよりR22の両端電圧を優先する。ちなみにVR2両端の抵抗は118Ω~119Ωだった。
2SK117BLは代わりに2SK2881が使えると思う。ただ実際に試したわけではないのでご参考。
電源トランスは西崎電機に特注した。見積もり依頼後に返信があり、発注してから3日で届いたのには驚いた。通常は1週間程度の納期となっている。
レイアウトはシンメトリー案とオーソドックス案を考えた結果、最近やっていないオーソドックス案とした。
シャーシは株式会社奥澤のアルミシャーシO-45(W300mm×D170mm×H50mm、t1.5mm)を使った。自分で穴開けを行い、チタニウムグレーメタリックで塗装し磨き仕上げとした。
諸特性を上記に示す。5%歪みでの出力は1kHzで5.4W~5.5Wだった。6B4Gのシングルアンプとしては十分な出力ではなかろうか。NFBは8.2dBと拙シングルアンプとしては深めにかけている。
使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E470 OS Windows10 Home
Analog Discoveryによる周波数特性。高域-3dB点は130kHzで十分伸びている。
クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-71dB以下となった。製作当初は酷い特性だったが、アースポイントの変更と、6B4Gカソードから+Bへのコンデンサ(ショートループ)C17追加で改善した。
Lchの歪率特性。NFBを深めにかけているが、こんなに低歪みとなったのは記憶がない。
Rchの歪率特性。各周波数でカーブが揃っている。
SP端子にコンデンサを接続、ダミーロードをオンオフしてみるが発振には至らなかった。
それでは、いつものようにブツ撮りをしたので掲載する。
シャーシサイドにはアクリルパネルを取り付けた。アクリルパネルははざいやに加工をお願いした。仕様はこちら。
シャーシ内部。カソードバイパスコンデンサ(C2,160V330μF)は無くても動作するが、試聴の結果そのまま残すことにした。
実体図もどきを上記に示す。ショートループのコンデンサ(C17,350V100μF)は評価後に追加したので記載されていない。
駄耳の私による試聴結果。低音がズシンと響きスケール感がある。クリアで繊細な音色となっており、音場の見通しが良い。6B4Gは2A3族でも後期に開発されたものと聞いており、音色にシャープさが感じられる。