最近騒がれている放射線量を測るために放射線量計を買ってみた、のではない。放射温度計のはなしである。ややこしい?
放射温度計というと、赤外線サーモグラフィーで温度分布を色で表すみたいな高価なのを想像するけど、検索してみるとただ単に非接触で表面温度を測るやつなら意外に安いことがわかったので、衝動的に買ってしまった。
http://item.rakuten.co.jp/edenki/ed611485/
これはレーザーで測定個所を決めながら表面温度を測るもので、最高値がホールドされるからレーザーでそのへんを照射していると最高温度がわかるというスグレモノ。
興味本位でそのへんの表面温度を手当たり次第に測ってみた。
・エアコンの吹き出し口は16℃
・体の表面は32.5℃くらい
・ガスレンジは250℃が最高…炎自体は物質じゃないから測れないんだ。
・金魚は27℃…水温を測ってるのかな?水中の発熱体は測れるの?
・白熱電球(40W)は93℃
・冷凍庫のアイスは-10℃
・オーブントースターのヒーターは350℃
・適温のコーヒーは65℃
・加熱沸騰中のやかん表面は113℃
この製品が測れる最高温度は500℃だから、我が家で測定不能になる物は見当たらない。
ずいぶん前置きが長かったけど本題に入る。これを買った本当の目的は真空管アンプのパーツの温度を測って、熱設計に対してどうなの?ということを確認するためなのだ。
手始めに、6N6P直結パラシングルアンプで測定することにした。室温は24℃。吹き出しは各部の温度を示している。電源をONしてから30分後にシャーシを倒して測定した。
6N6Pは一番熱くて136℃。ヒーター電力は6.3V×0.75A≒4.7W。プレート損失は双三極管合わせて5W。1本で合計9.7W消費している。
やっぱりというか、ソケット付近の温度が高い。MT管ではソケットを介してシャーシに放熱しているということ。シャーシは温度分布に差があるけれど、真空管から離れたところで40℃。
電源トランスは33.8℃。意外に低かった。もっとも熱容量が大きいから温度が上がるのに時間がかかるのかもしれない。
次にシャーシ内部。シャーシを倒して測定しているから、実際使用する状態ではもっと高くなるはず。そのへんを考慮して温度を見て欲しい。
FETの放熱板は42.3℃。FETの消費電力は1.4W。仮にシャーシ内の温度が50℃に上がったとしても68.3℃だから十分に低い。
+Bの整流後最初の電解コンデンサ100μF350Vは49℃。やはりリプル電流のために高めだ。クロストーク対策のために追加した電解コンデンサ47μF350Vは6N6Pカソード抵抗のリードと共通になっているためか63℃と高い。
6N6Pカソード抵抗は直結アンプだから66℃〜75℃と高め。抵抗1個の消費電力は1.9Wで、5Wのセメント抵抗を用いて38%の余裕で使用している。
意外だったのは6N6Pのショートループ用電解コンデンサ330μF250V(斜めになっている黒いやつ)で65.3℃と68.7℃。これは6N6Pのカソード抵抗とリードが直結になっているから温度が上がるのだろう。抵抗のリードはかなり熱を持っていて放熱しているということ。
以上、気づいた点をまとめると、
① MT管のソケットは真空管の放熱を仲介しておりシャーシにかなり放熱している。サブシャーシであっても面積は広く取る。
② 出力管は特に温度が高くなるので、ソケットのピンに電解コンデンサ等の熱に弱い部品のリードを直結することは避ける。
③ 電力を多く消費する抵抗はリード線の温度が高くなるので、電解コンデンサはリードを直結せず離して取り付ける。
④ シャーシ内に半導体のヒートシンクを取り付ける時は温度設計に余裕を持ったほうが良い。
⑤ 発熱する抵抗や出力管ソケットのピンへのハンダ付けは劣化しやすいので、リードや配線をからげたほうが良い。
で、結果はどうなのか。一番気になったのは電解コンデンサの温度上昇で、105℃品を使っているから当面は大丈夫だろう。仮に10年使ったら交換が必要となるだろうが、私の場合アンプをとっかえひっかえ使っているから問題はおきにくいと思う。
これからの設計は③・⑤を考慮する必要があると感じた。