真空管のヒーターは主に電源トランス(ヒータートランス)で降圧して所望の電圧で点火するが、コンデンサを使ってAC100Vから直接点火する方法がある。
ヒーターとコンデンサを直列にする場合は上記のようになる。
インピーダンスは上記の式で表される。これを変形して、
直列ヒーター電圧は、真空管を複数本使用する際の合計電圧。使用する真空管のヒーター電流は、当然同じでなければならない。
そこでヒーター電圧と電流からコンデンサ容量を算出するExcelを作ってみた。Excelデータはこちら。
例えば6922を4本直列にした場合に必要なコンデンサ容量を計算してみよう。6922のヒーター定格は6.3V0.3A。
50Hz地域でコンデンサは9.9μFと計算される。耐圧は212Vなので250VでOKだろう。実際に用いるコンデンサは4.7μF250Vを2個、0.47μF250Vを1個という感じ。3個を全て並列にする。
直列ヒーター電圧の合計が大きいほど、必要なコンデンサ容量は少し大きめになる。このへんが、頭でイメージする容量とは違う。
ヒーター電流が大きいと、コンデンサ容量がどんどん大きくなるので、ヒーター電流が小さい真空管のほうが有利。
コンデンサとヒータートランスの大きさを比較。トランスには漏洩磁束があるので、コンデンサはその点有利だ。コンデンサの容量が大きくなるとヒータートランスと変わらない位のサイズになり、高価となるのであえてコンデンサでヒーター点火する意味を失う。
注意点
・電源周波数が異なる(東日本50Hz、西日本60Hz)ので住む地域によりコンデンサ容量が変わる。
・コンデンサは必ずフィルムコンデンサを使用すること。等価直列抵抗(ESR)が低く、発熱が少ないため。電解コンデンサは不可。
・直列コンデンサによる点火はトランスを使用した場合に比べてヒートアップする時間が長めになる。
・ヒーター電圧の異なる真空管を組み合わせた場合、ヒートアップするまでに各真空管のヒーターにかかる電圧にアンバランスが生じる可能性がある。
・ヒーターをアースするといったヒーターハム対策ができないので、低雑音を要求されるアンプに使用した場合は残留ノイズが高くなる可能性がある。
・電源オフ後にもコンデンサには電荷が溜まったままとなる場合がある。セット内部をいじる場合は放電することをお忘れなく。感電注意!