これくらいの実験なら片手間?でできそう、ということで、簡単な実験をやってみることにした。
ニチコン株式会社 アルミ電解コンデンサテクニカルノート より引用
一般的な電解コンデンサのインピーダンス特性は上記のようになる。周波数が上がるに従い1/(2πfC)で算出されるカーブで低下していくが、等価直列抵抗ESRのために下がらなくなり、さらに周波数が高くなると等価直列インダクタンス(主にリードのインダクタンス)のために上昇カーブを描く。
ここで、真空管アンプの+Bに入っている電解コンデンサ及びカソードバイパスコンデンサについて考えてみよう。
私が真空管アンプに使っている電解コンデンサとして、+B用としてニチコンのKMG・100uF350V、カソードバイパスコンデンサとして東進工業のUTWRZ・1000uF25Vを代表に選び、インピーダンスの周波数特性を調べてみた。また、並列に接続するフィルムコンデンサにはシズキの0.1uF250Vを使用した。
測定回路を上記に示す。コンデンサと直列に入れた抵抗100Ω両端の電圧をV1、コンデンサ両端の電圧をV2とすると、CR直列回路の電流はI1=V1/100Ωとなり、コンデンサのインピーダンスはZ=V2/I1=V2*100/V1で算出される。
抵抗が100Ωである根拠は特になくて、たまたま手持ちにあったのと、計算できりが良いので使ってみた。
実験結果のグラフを上記に示す。ニチコンの100uFでは0.1uFのフィルムコンデンサを並列にしても500KHzまでは同一のカーブとなった。1MHzでは、フィルムコンデンサを並列にしたほうがインピーダンスが下がっているが、1MHzでの0.1uFのインピーダンスは計算上1.59Ωとなるので、本来はインピーダンス低下に寄与しないはずである。
また、ESRのためにインピーダンスの低下がゆるやかになっているものの、だらだらと下がり続けているのは等価直列インダクタンスの影響が見えてこないためだろうか。
等価直列インダクタンスは、リードがリプル電流に耐えられるように太くなっており、1MHz程度ではその値が低いためと思われる。
東信工業の1000uFでは上記のグラフとなった。こちらはモデルカーブと同様な曲線を描いている。1MHzでフィルムコンデンサを並列にしたほうがわずかにインピーダンスが高いのは、並列に接続するために使用したミノムシクリップによりノイズを拾ったためと考えられる。
100uFと1000uFで実験した結果は、0.1uFのフィルムコンデンサ程度では真空管アンプの高域補償にはならないということである。電解コンデンサのESRは十分に低い。500KHz以上で効いてきたとしても、既にアンプの周波数特性は低下してしまっており、補償にはならないといえる。
電解コンデンサがニチコンの100uFに対し、フィルムコンデンサが10倍の1uFでの場合にインピーダンスがどうなるかを点線で示してみた。やはり500KHz以上でないとインピーダンスが下がらないことが予想できる。
今回は一般的な電解コンデンサとしてニチコンのKMG、東信工業のUTWRZを取り上げてみた。現在生産されている電解コンデンサを使用する限り、真空管アンプにおいてフィルムコンデンサを並列にするメリットはインピーダンスに関していえば無いだろう。
オーディオは電気的特性のみならず聴感上の特性や音質で鑑みるに、並列にすることによるチューニングの余地が考えられるので全否定はしない。
ただ、やみくもに効果があると信じてフィルムコンデンサを使うのは疑問を感じる、というわけだ。