出力100mWのシングルアンプを作りたい。しかも小出力だけど存在感のある音で。そう考えるとやはり直熱三極管の一択になるだろう。
私はときどき下方リニアリティという言葉を使っているが、静かな部屋でニアフィールド聴取環境ならば音量を上げなくても十分だと思っている。
ところが世の中は真空管アンプであっても出力をできるだけ絞り出すほうが主流だ。私は以前、SP端子にミリボルトメータを接続してどのくらいの音量で聞いているのか確かめたことがあった。結果は100mWなら十分な音量であることがわかった。500mWにもなるとうるさくて聴いていられないくらいだった。
QRPアンプは真空管アンプビルダーには不評だ。オフ会で鳴らしても音量が足らないからである。でも自宅で鳴らすんだったら問題ない。
QROに走るのではなくてQRPで。わざわざ人前で鳴らすことを考えない、自分のための真空管アンプ。
前置きはこれくらいにして、タマは何がいいか。調べてみるとQRPでは電池管が最良ということになる。MT管で考えると3A5ではどうか。
フィラメントは2.8V0.11Aもしくは1.4V0.22A。直熱の双三極管という珍しいタマ。最大プレート電圧は135Vでプレート損失は1ユニットあたり0.5W。
ロードラインを引いてみた。
OPTの1次インピーダンスを7KΩとして、パラシングルで使うとロードラインを14KΩで引く。動作点をEb=100V、Ip=3mA、Eg=-3.8Vとして出力を見積もってみたら85mWくらい。動作点におけるμは14、rpは8.9KΩだった。
フィラメントの点火は電池でなくてDC-DCコンバータを使おう。1W絶縁型DC-DCコンバーター(3.3V260mA) MAU101 \350で、東栄のヒータートランス(J631、5V6.3V1A)を整流、簡単なリプルフィルタを通して電源を供給する。3.3VをCRフィルタで1.4Vまで落とす。
+B電源には同じく東栄のZ-5VA(100V110V115V 5VA)でFETリプルフィルタを組む。OPTは東栄のT-1200を7KΩ:8Ωで使う。トランス類は全部東栄だ。
初段は2SK117か2SK30Aで出力を3A5のグリッド直結とする。
ほとんど発作的に考えたアンプだけど、これもアイデアであって妄想にしかならないかもしれない。
Webに作例はあるのだろうか。85mWの真空管アンプなんて考える人はそんなにいないだろうから、やってみる価値はあるのかもしれない。