発端は3A5パラシングルアンプにさかのぼる。この真空管を使ったアンプはとても良い音がする。数ヶ月前にA2級に改造したが、それでも出力は350mW。ではトリプルプッシュプルにしたら3倍の1050mW出るかなあ、と考えた。
実験では当初OPTを8KΩ:8Ωで使用したら出力は0.8W。そこで、4Ω端子を使って16KΩ:8Ωとしたら出力は1.0Wとなった。特性的にも問題なかった。
電源トランスは春日無線の特注品で、電源関係を1個にまとめたかったから。フィラメントへの電圧供給は実験ではDC-DCコンバータだったが、通常のダイオードとCRフィルタで構成した回路でも残留ハムが0.1mV以下に抑えられることがわかったのでこちらを採用した。
シャーシはアルミ弁当箱の奥澤O-47(W230×D140×H50 t1.5)を使用。OPTのトランスケースの固定穴をシャーシの合わせ目に開けたら、ドライバーが斜めになってビスがとても止めにくかったので、これからはそこを避けようと思う。
シャーシ塗装には下地にプラサフを2回、仕上げにはつや消しディープグリーンのアクリルスプレーを2回塗布した。1回塗布する毎に簡易焼付塗装を行っている。温度は60℃くらい。
回路図を上記に示す。直結アンプだから音質的にチューニングできるところが殆ど無い。今回はCRフィッティングを全くすることなく完成した。NFBを3dBかけただけ。
このアンプのDCバランスは、100Hzの2Vp-p方形波で行った。オシロを見ながらVR1を回すと方形波のサグが変化する。25回転のうち180度くらい(半回転)でバランスが取れるので、かなり精度良く調整できるように思う。
これはOPTのDCバランスが取れていないと低域のレベル低下が起こることを利用したもので、このアンプのようにカソード側に抵抗を入れてDCバランスを取ることができない場合に有効となる。
出来上がって試聴してみるとナニコレ眠い音?というか、印象が全くない音。そこで秘伝のタレじゃなかった、カソード抵抗と並列にフィルムコンデンサを入れてみた。手持ちの関係で0.012uFとした。純粋な差動アンプでは無くなってしまったが、音の印象が自分好みになったからそれで構わない。
諸特性を上記に示す。詳細な特性評価結果はこちら。
正面から。3A5が3本くっついて並んでいるせいか、なんだかシャンデリアのように見える。
電源トランスをOPTのトランスケースまで後退させ、3A5を6本インライン配置にしたほうがデザインは平凡になるが良かったかもしれない。
真上から。電源トランスを中央に配置しているので、片手でそれを持って運ぶことができる。3A5は40℃くらいにしかならないし、シャーシ内部に発熱するパーツが殆ど無いので真空管の周りに放熱穴は設けていない。
斜め横から。アクリル板は4辺を磨き仕上げ、2.5mmの角丸めとしている。2枚で712円。発注先ははざい屋。
後ろから。ヒューズホルダーに緑のを選んだんだけど、シャーシの色と合っていない。黒のほうが良かった。
3A5のアップ。下からLEDで照らしているのをあまり意識させない。LEDは電球色。
シャーシ内部。2つの平ラグ基板が端に寄りすぎていて整備性最悪。3本の真空管ソケットを配線がとぐろを巻いている。発振とか周波数特性の暴れは無かったので良しとする。インラインのほうがきれいに配線できると思う。
LEDのリードがむき出しになっていて、電圧測定中などに誤ってショートさせてしまいそう。熱収縮チューブとかじゃなくて、リードを絶縁できる方法はないかなあ?
反対側から見る。左チャンネルの入力シールド線の取り回しが悪く、残留ノイズが0.1mV程度増えてしまった。シャーシの隅を這わせるようにしたほうが良いかもしれない。
さて試聴結果を。このアンプは音量を上げてもうるさく感じないので、ボリュームを上げ気味にしてしまう。隣りの部屋に漏れる音量を確認するとわかる。相対的に低音のレベルが上がるせいか、ミニアンプにしては低音が凄く出ているように感じる。中高域の透明感が高いように思う。
私より耳の良い!?妻の試聴結果を下記に示す。
・すごく透明度が高くていい感じ。
・さわやかだね。
・今回のはパーカッションの粒立ちが良い。格段に良い感じ。何かした?
・(真空管の)見た目がいい。
・やっぱりすごいよ。
・音が団子になって聞こえる、そういうのがない。