拙6B4Gシングルアンプは無帰還でのDFが1.6〜1.7と低い。本来ならもっと高い値を示すはず。
そこでなぜDFが低いのか、解析してみることにした。参照:6B4Gシングルアンプのリニューアル・改造完了
出力段の回路図を上記に示す。OPTはTANGOのU-808を3.5KΩ:8Ωで使っている。
上記(a)図において、アンプの出力に負荷RL=8Ωを接続した時のアンプの内部抵抗roを模式図で表したもの。DFは実測で1.69だったので、ro=8Ω/1.69=4.73Ωとなる。
(b)図は出力段の模式図で、6B4Gの内部抵抗rp、ハムバランサ、OPTの1次巻線DCR(=209Ω実測)、OPTのインピーダンス比(437.5:1)、OPTの2次巻線DCR(=0.7Ω実測)で成り立っている。あとは結合係数とかあるけど、とりあえず無視することにする。
ハムバランサは100Ωなので、中点での50Ωの並列により25Ωとなる。25Ω*(μ+1)としてrpと直列に加算される。
U-808の3.5KΩ:8Ωでの電力損失はカタログより0.65dBとなっている。電力の0.65dBを換算すると0.86倍となる。
上記の模式図に損失をどのように取り込んだらいいのかわからないのだが、以下のように考えた。
ON/OFF法でONの電圧は2V8Ωなので0.5W。損失が無いものとすると0.5/0.86=0.58W出る計算になる。これを電圧に直すと2.16V。
OFF時の電圧は実測3.18Vだったので3.18-2.16=1.02V。損失が無い場合の内部抵抗ro=1.02*8/2.16=3.78Ωとなる。
損失が無い場合のDFは、
DF=8/3.78
=2.12
6B4Gのrp=800Ω、μ=4とすると、
ro={800+25*(4+1)+209}/437.5+0.7
=3.29Ω DF=8/3.29
=2.43
DF値はかなり異なっている。
6B4Gのrpとμを測定してみることにした。上記は簡易測定回路で、rpはEp-Ip特性図のEgを一定にした曲線の動作点における傾きとなる(rp=⊿Ep/⊿Ip)。また、μは特性図において、Ipを一定にしてEgを振った時のEpで示される(μ=⊿Ep/⊿Eg)。
バラックを組んで測定中。
結果を上記の表で示す。
おおよそrp=1033Ω、μ=4.5となった。
再びroを計算してみると、
ro={1033+25*(4.5+1)+209}/437.5+0.7
=3.85Ω DF=8/3.85
=2.08
損失が無い場合のDF=2.12とほぼ一致した。
次にRchの6B4GでDFを解析してみる。DFは実測1.63となった。ro=8/1.63=4.91Ω。
OFF時の電圧は実測3.23Vだったので3.23-2.16=1.07V。OPTの損失が無い場合の内部抵抗ro=1.07*8/2.16=3.96Ωとなる。
損失が無い場合のDFは、
DF=8/3.96
=2.02
Rchの6B4Gを実測した結果を上記の表で示す。おおよそrp=1083Ω、μ=4.6となった。
再びroを計算してみると、
ro={1083+25*(4.6+1)+209}/437.5+0.7
=3.97Ω DF=8/3.97
=2.02
損失が無い場合のDF=2.02と一致した。
以上、DFが低い原因をまとめると、
① OPTのTANGO U-808の損失が大きめ(3.5KΩ:8Ωで0.65dB)
② ①関連でU-808の1次巻線DCRが高い(実測209Ω)
③ ハムバランサの影響 25Ω*(μ+1)
④ 6B4Gのrpが高い(≒1KΩ)
⑤ 6B4Gのμが高い(≒4.5)
一般にOPTの1次巻線DCRが高いと損失が大きめとなりDFが低く出るようだ。6B4Gのrpはデータシートでは800Ωだが実測は30%以上高かった。では2A3ならどうなのか、簡易測定回路のヒータートランスを2.5Vのものと交換して確かめてみたい。