おんにょの真空管オーディオ

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主に真空管を使用した自作アンプでの試行錯誤を公開しています。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

6CH6/CV4055シングルアンプ・完成

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きっかけはウォームトーンでウェットな濃い音のするアンプを作りたいと思ったのだった。ネットで検索してみると、安価な真空管では6CH6/CV4055が「独特な艶っぽい音」「欧州系のこってりした音」という評価のあることがわかった。

 

そこで拙6P1Pシングルアンプのタマを差し替えて聴いてみた。五結、三結、UL接続と試してみて、一番良かったのはUL接続だった。

 

出てきた音は繊細でクリア、艶っぽさやこってりした感じは微塵もなかった。初段の6N2Pを12AX7やECC83に替えてみたが傾向は変わらない。

 

でも聴き続けるうちに、このタマの持つ音色にどっぷりはまり込んでしまった。魅力的な音を出すといったらいいのか、そのように聴かせるツボを心得ているとでも言うのか。

 

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拙6P1Pシングルアンプは4年前に作ったものだし、製作技術も向上していることからこの際2号機を作ってみようと思い立った。

 

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2号機の回路図を上記に示す。1号機の電源トランスKmB150Fはヒーター電流を規格オーバーで使っていることもあって、2号機では東栄変成器のP-80にした。ところがこのトランスはレギュレーションが悪く、+B電圧が予定より23Vも低くなってしまった。

 

P-80には1次側に90V端子があり、これをAC100Vにつなぐことで2次側の電圧を上げてある。ヒーター電圧も高くなってしまうので、直列に抵抗を入れて下げている。

 

CV4055のカソードにはLM317Tの定電流回路が入っている。これはクロストーク対策のためで信号電流をショートループコンデンサC3へ流す。低い周波数ではC3のインピーダンスが高くなりカソードに振幅が現れるので、定電流回路の最低動作電圧を確保するためグリッドに+10Vの電圧を加えている。

 

D4は電源投入時に+B電圧が上昇するのに従いLM317Tの最高動作電圧40Vを超えてしまうのをクランプするためで、通常は動作していない。

 

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諸特性を上記に示す。出力は5%歪みで2.1W、CV4055は熱くなるタマなので控えめの動作にしている。NFB量は10.7dBで多めだが、たまたま三結から変更した時に多くかかってしまったものの試聴結果が良かったのでこの値となっている。これ以上増やすと優等生的な特徴のない音になってしまう。

 

残留ノイズは主にヒーターハムを引いているためだが、ヒーターを0.1uFのコンデンサでGNDに落とした時が最も低くなったので採用した。消費電力が1号機の32.3Wに比べて多めなのは電源トランスの損失が大きいため。

 

詳細な諸特性はこちらを参照。

 

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それでは完成したアンプの写真をご披露。トリミングのせいか平たく見えるけど気のせい。1号機に比べてソケットを落とし込みにしたために真空管周りがすっきりしている。シャーシ穴を大きめに開けて真空管の熱せられた空気が上昇する時にシャーシ内の空気を吸い出すようにしている。実際にそうなっているかはわからないけど。電源トランスの穴も同様になっている。

 

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OPTのトランスケースは黒の塗装のままでザラザラした感触。これもダークグレーマイカメタリックで同色に塗装するとくどくなるかなと思ったのでやっていない。

 

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サイドパネルは黒のアクリル3mm厚で、はざい屋にカットと磨き・角丸めをお願いした。2枚で818円だった(送料含まず)。1枚から受け付けてくれるので嬉しい。

 

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今回もレタリングはしなかった。しなくてもどこをどれに接続するのか自分ではわかるし、レタリングの技術が低いので仕上がりが気に入らない可能性があるため。

 

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こっちの画像だと真空管がトランスケースの陰に隠れて見えないけど、後面からの写真としてはどっちも良いので載せてみた。

 

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真上から撮った画像。1970年代の初歩のラジオには原寸大の立体実体図というのが折り込みで付いていて、上面からの図面がちょうどこんなふうだったのを思い出す。

 

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電源トランスがデカイがOPTのトランスケースとの高さが合っているので良いかな。電源トランスとOPTがこのように対角の配置になるのは残留ノイズの点で不利なのだが、デザイン優先でそうなっている。

 

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シャーシ内部。平ラグ基板を使用し、真空管ソケットとの接続は基本的に配線と発振防止用の抵抗のみ。抵抗は金属皮膜抵抗を使用していて、温度変化に対する抵抗値の変化が少ない。

 

カップリングコンデンサはASCの0.33uF400Vで、手持ちの活用だが音色の変化が少ないのと信頼性の高さを考えて採用している。

 

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反対側から見たところ。やっぱりブロック電解コンデンサへの接続が見づらいね。TK3A60DAをシャーシへの放熱のためにコンデンサの固定ネジに共締めしている。

 

配線を捩るのはAC1次・ヒーター・+BのAC220Vで、漏洩磁束を減らすと共に外部からの影響を受けにくくすることによりノイズを減らしている。

 

AC1次側はノイズの伝搬を電源トランスで遮断させるために他の配線と束ねない。画像では殆ど見えていないけど、シャーシの端っこを這わせている。P-80には静電シールドのE端子があるけど効果のほどは不明。

 

シャーシアースは中央の真空管ソケットの固定ネジで、立ラグでGND配線を集めてアースしている。

 

駄耳での音の印象を書いておくと、繊細でクリアな感じがするのはCV4055の持つ音色の特徴によるものだろうか。小音量でのニアフィールドリスニングでは、20Hzあたりに盛り上がりがあるせいかバスブーストがかかったようでスケール感があって心地よい。音場は後方に展開し情景描写が良く分かる。

 

最後に私より耳の良い!?妻の試聴結果。

・バランスがいいね

・広がりというか、スケール感があるよね

・ロンダドール(管楽器)の風の音がよく聞こえた  生音の風みたいな感じ

・ウェットとか軽いとか、どちらにも傾いてない

・ボーカルの声がききやすい、うるさい感じがない  そういう意味では優等生的かな

・まとまっている、でもチェロの音とかはよく聞こえてた

・低音がきれい、男の人の声とか聞きやすい

しっとりとした曲よりも歯切れの良い曲に合っているのでは、ということだった。

 

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