普通こんなこと誰もやらないよなあ、ということで、EL32差動プッシュプルアンプの1本を6V6GTに差し替えて特性を調べてみた。
回路図を上記に示す。EL32のカソードには0.01uFが入っていて厳密には差動プッシュプルではない。
差動プッシュプルの信号ラインは上下の2管が直列となるので、真空管が異なっていてもそれなりに動作してしまう。当然2本の管ではバイアス電圧が異なるから、DCバランス調整を行った後特性を測定した。
まずは1W出力時の周波数特性の比較。6V6GTを挿したほうがほんのわずか高域の低下が早いが、電極間容量の差と思われる。
6V6GTを片方だけ挿した時の歪率特性。
こちらはEL32のみ。特性カーブはほぼ同じでクリップ前の歪率が低い。
じゃあ片方だけ6V6GTで無理やりDEPPにしてみよう。カソードに470uFのコンデンサを接続してDEPPにした。DCバランスは調整済み。
1W出力時の周波数特性の比較。もう殆ど同じといっていい。
6V6GTを片方だけ挿した時の歪率特性。歪率が悪化し、歪率カーブが直線的になっている。
各周波数における歪率カーブは同じで、特に100Hzで悪化するといった現象は見られない。ちなみに5mAのアンバランス電流での歪率悪化は殆ど無かった(FE-25-8の許容DCアンバランス電流は7mA)。
こちらはEL32のみ。特性カーブは差動プッシュプルとほぼ同じとなった。
以上まとめると、差動プッシュプルでは2本の真空管が異なっていてもそれなりに動作してしまう。DEPPでは歪率の悪化が見られ、それはOPTで波形の合成がされる時に上下の波形が異なっているためと考えられる。DCバランスが取れていれば低域での歪率悪化は無い。
一般的には同じ銘柄の真空管であれば、バイアス電圧が近ければ特性も似通っていると考えられるので、DEPPではバイアスの調節でDCバランスが取れればOKと考えて良い。
ご参照→ペアチューブ