おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

6T9 CSPPアンプ・完成

画像

それはバーチャルCSPPアンプの設計から始まった。手持ちの真空管に6T9があったので、これで設計することにした。

 

画像

6T9はコンパクトロン管で、6AQ5A相当の5極管と6AV6相当の3極管が1つの管に収められている。ずんぐりしていて背が低いせいか人気がなくて安い。私はこういう形状の真空管が好きなので、17JZ8を使ったマッキントッシュタイプCSPPアンプを製作している。

 

画像

OPTはMFさん謹製で、1次8KΩ(1巻線あたり2KΩ)、2次8Ωで10W46Hzの仕様。

 

画像

回路図を上記に示す。初段は2SK117と6T9の3極部によるカスコードで、6T9のrpが高いことから高域が伸びないことを心配したが、問題ないことがわかった。出力段は6T9の5極部によるCSPPで自己バイアスとしている。

 

電源部は出力段用の+BにFETリプルフィルタを採用。当初はチョークを予定していたが、重量削減と価格低減のために変更した。+B1は初段用で、ブートストラップを使用しないために高電圧が必要となり、AC180Vを倍電圧整流してDC427Vを得ている。その他、初段カスコード用と-C電源としてAC6.3Vを半波整流して電圧を作っている。

 

画像

シャーシは奥澤のO-45(W300mm×D170mm×H50mm t1.5mm)のアルミ弁当箱を穴開けし、補強を兼ねて裏蓋も作成。

 

画像

OPTにはGARRETT AUDIOのトランスカバー、TCN102(W85mm×D85mm×H100mm t1.2mm)を被せた。真空管の背が低いので、あと10mm低いものがあったらそちらを採用したと思う。

 

画像

シャーシの塗装は下地にプラサフ2回、上地にダークグレーマイカメタリックを2回、仕上げにクリアを2回スプレー塗装している。コンパウンドで磨いて光沢仕上げとした。

 

組立後の評価は、バラック実験である程度わかっていたので問題となりそうなのは残留ノイズとクロストークくらい。結果は残留ノイズは問題なく、クロストークRCA入力周りに問題があったので少々修正した。

 

画像

諸特性を上記に示す。6dBにNFBをかけて利得は14.5倍、DFは10、残留ノイズは0.08mVとなった。出力は10Wで当初のもくろみ通りとなった。詳細な特性はこちらをご参照。

 

いつものように、私より耳の良い!?妻に聴いてもらった感想を以下に記す。

----------------------------------

・中低音がよくきこえる

・男性ボーカルが楽しく聴けた

・わりとさっぱりバージョンにできてる

・ボーカルが前に出てきて聞こえた

・低音が出ているのでベースがよくきこえる

・歯切れがいいからジャズ系に向いている

----------------------------------

私はジャズを聴かないのでジャズに向いていると言われても困るが、ジャズが好きな人は好みに合うと思う。私の感想はシルキータッチで情感豊かに再生するし、CSPPアンプ共通のものを持っているように思う。

 

さて、いつものようにブツ撮りをしたのでご披露。

画像

正面から。やはり6T9の背が低いのは否めないが、リスニングポイントからはすこし見上げる形になるので案外気にならない。トランスカバーがあと10mm低かったら良かったのにとは思う。

 

画像

斜め上から見下ろしたところ。この位置ではトランス類の高さが強調される。

 

画像

ほぼ真上から。重量バランスのために電源トランスが前に出ていて、内部の平ラグ基板も前に押し出され、6T9も前進しているのはレイアウトの都合上そうなっただけ。

 

画像

斜め上から。放熱穴から内部の配線が見えるのは仕方ないよね。

 

画像

後ろから。電源トランスが前進しているのは、じつは+B1基板を後ろに置こうとした時の名残り。

 

画像

横から。今回もシャーシの合わせ目を隠すためにアクリルパネルを貼り付けた。

 

画像

6T9を上から。この真空管は結構ヒーターが明るい。真空管ソケットのグリーンがアクセントになっている。

 

画像

シャーシ内部。+B1基板を置く位置に困って、結局フロントの裏側に貼り付けボスで固定した。カップリングコンデンサが+B1の電解コンデンサによってノイズの影響を受けるので、電解コンデンサを傾けて応急処置している。

 

画像

反対側から見たシャーシ内部。Lchのシールド線が災いしてR→Lのクロストークが悪化した。それでも20KHzで-83dBを確保したので良しとした。

 

今回は試作機での確認を行わずバラックでの実験機からいきなり本番機に移行したわけだが、案外スムーズに完成できた。回路は17JZ8 CSPPアンプを元にしており、ある程度の実績があったからこそ再現できたように思う。

 

まだ長期評価は行っていないが、とても行儀が良くて問題が起こるようなことはないかんじ。でもこれから暑くなってくるので真空管からの放射熱が気になる。活躍するのは秋以降になるかもしれない。

 

最後に、OPTの提供を頂いたMFさんに感謝の意を表します。

 

画像