私は真空管アンプの+B電源回路にFETリプルフィルタをよく使うが、その出力インピーダンスがクロストーク特性などに影響する。そこで現在入手可能な高耐圧MOSFETを使って出力インピーダンスを調べてみた。
測定回路を上記に示す。今回はMOS-FETリップルフィルタ電源の基本特性の追試をするつもりだったが、電流注入法によるインピーダンス測定でファンクションジェネレータらしき機器が使用されているため代用としてトランジスタ式ミニワッターとオシレータを用いることにする。
トランジスタ式ミニワッターの出力インピーダンスは0.068Ω程度であり、RL=8Ωに対し十分低いため使用可能と判断する。
実験装置全景。
バラックで製作した実験回路のアップ。
始めに注入アンプの出力電圧を変えながら出力インピーダンスを測定したところ上記のようになった。測定電圧で出力インピーダンスが変化してしまっている。
原因がよくわからないのだが、NJM317定電流回路の最低動作電圧を割ってしまうためか、はたまたトランジスタ式ミニワッターの出力インピーダンスが出力電圧で変化するのか?
厳密に測定できないことを前提に、注入アンプの出力電圧を影響が少ないと思われる0.1Vとし、MOSFETを替えながら比較することにした。だから以下の出力インピーダンスは相対値、即ちFET毎の大小として見て欲しい。
用意したMOSFET。一番左のTK31N60Xはオン抵抗が0.073Ωというので購入したが、結果からいうと意味が無かった(笑)。上記に無い2SK3067は使用機器から取り外せば良いのだが、ディスコンで一般的には入手困難なため外した。
FETリプルフィルタは基本的にソースフォロアなので、gmが大きいほうが出力インピーダンスが低くなるはず。一般的に耐圧VDSSが高いほどgmが低くなると思われるため、使用する電圧のピーク値がVDSSより十分低い前提で、VDSSが低めのMOSFETを採用したほうが有利ではないだろうか。
測定結果を上記に示す。出力インピーダンスは低い方から
2SK3234 < TK31N60X < TK6A65D < TK3A60DA
となった。TK31N60Xもよく健闘しているが、TO-247ってデカイからねぇ。ゲート〜ソース間電圧VGSはどれも3.7V〜3.8Vだった。
上記のグラフは各MOSFETにおける出力インピーダンスの周波数特性を調べたもの。大体10KHz〜20KHzより高い周波数でインピーダンスが上昇していることがわかる。
TK31N60Xの上昇カーブが目立っている。これはゲート入力容量Cissが3000pFと大きいことが原因と思われる。
2SK3234において、ソース〜GND間に10uFの電解コンデンサを接続し、無しの場合と比較してみた。
結果のグラフを上記に示す。2KHzあたりからインピーダンスが低下しているようすが見て取れる。これより高域クロストーク悪化に影響する電源のインピーダンス上昇が抑えられることがわかる。