おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

6FJ7シングルアンプ・完成

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6FJ7シングルアンプの本番機が完成した。ヤフオクで6FJ7を入手したのでその音を聴きたいなと思ったのがきっかけだった。まずはシングルで製作することにした。デッドスペースとなる電源トランス前に小さなチョークコイルを置いたらデザイン的にまとまりのあるものになったように思う。

 

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6FJ7はそれぞれμの異なる2つの3極管が1本に収められたコンパクトロン管だ。同特性ではGT管の6DN7がある。

 

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標準動作例を上記に示す。

 

6FJ7は電力増幅ユニット(Section2)のrpが2KΩと高く、インダクタンスの低いOPTを使うと低域のレベル低下が大きくなってしまう。当初はノグチトランスのPMF-6WSを使う予定だったがインダクタンスが12Hしかなく、春日無線変圧器のKA-5730に変更した。このOPTのインダクタンスは16Hある。

 

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6FJ7の電力増幅ユニット(Section2)の特性図にRL=7KΩのロードラインを引いてみると動作点でのプレート電圧は300V程度が良さそう。これは電圧増幅段と直結にするとさらに高い+B電圧が必要となり、カソード抵抗の発熱が多くなることから、カップリングコンデンサを使った一般的な2段増幅アンプにしようと考えた。

 

6FJ7の電圧増幅ユニット(Section1)のμは22.5で、普通の2段増幅では利得が低くなってしまうため、FETのカスコード回路として初段の利得を稼ぐことにした。

 

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最終的な回路図を上記に示す。位相補正容量C4は入れていない。

 

設計当初では初段利得の計算を間違えて試作段階での無帰還利得が50倍と多すぎたので、初段のプレート抵抗を半分に減らす対策をした(R3:100KΩ→56KΩ)。

 

6FJ7は真空管テレビ用の垂直発振出力管なのだが、ヒーターハムを引きやすいことがわかった。ヒーターは当初GNDに落としていたがそれでは残留ノイズが低くならず、ヒーターバイアスを検討したところ60V程度までかければヒーターハムが低くなることがわかった。

 

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諸特性を上記に示す。周波数特性は高域が伸びていないものの低域のレベル低下が少なくなっている。出力は100Hzを除けば2.0W出ている。DFは5.0あり問題ない。チョーク後にFETリプルフィルタを通すことで+Bの残留リプルが低くなり、結果的に残留ノイズはLch 50μV、Rch 70μV(補正なし)に収めることができた。詳細な特性はコチラを参照。

 

試作して特性を測定したところクロストーク特性が良くないことが判明した。これは6FJ7の電圧増幅ユニットが他チャンネルの電力増幅ユニットの飛びつきにより悪化しているため。本番機ではソケットを90度回転して取り付け6FJ7の電力増幅ユニットが正面を向くように配置したらどちらのユニットも飛びつきによる影響を同じにすることができた。ただこの類のクロストークは聴感に影響を与えないことがわかったので、単なる特性向上の目的で対策したに過ぎない。

 

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アルミシャーシは(株)奥澤のO-48、W200mm×D140mm×H50mmを使った。厚さは1.5mmで十分だがミニアンプには1.0〜1.2mmあればOKだ。シャーシ高が50mmあってあと10mm低ければいいのにと思う。

 

デザインは愛着が湧くものにしようと思った。シャーシ上の配置はオーソドックスだが、電源トランス前にデッドスペースが生じるため小さなチョークコイルを持ってきた。

 

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真空管ソケット穴の加工にはミヤモト工房のサークルカッターを使った。穴径が28mmと半端だが、このサークルカッターなら穴径の設定が自由にできる。しかも加工時の騒音が低い。

 

シャーシと裏蓋の塗装はまず#400のペーパーで水研ぎ、プラサフを2回、本塗装にはダークグレーマイカメタリックのスプレー塗装を2回、上地はクリアを3回塗装した。気温が低いので缶とシャーシを暖めてから吹いた。

 

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1回塗装するごとにカーボンヒーターで簡易焼付け塗装(50℃〜70℃)を行った。本来焼付け塗装は170℃程度の高温で行うもので、私のやっていることは単に高温乾燥に過ぎないので簡易焼付け塗装と呼ぶことにしている。

 

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塗装が乾いたらコンパウンドで磨き、クルマ用のコーティング剤を塗っている。

 

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斜め上から。あまり遠くから写真を撮ると奥が小さく写らないので歪んで見えてしまう。この場合は50cm程度離して撮ったほうが良いみたい。逆にあまり近づき過ぎると手前のパーツが強調されてしまう。このさじ加減が難しい。

 

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シャーシのサイドにはいつものようにアクリルパネルを貼り付けた。 電源トランスのネジが無塗装なのが目立つ。組み立ててしまってからネジの頭を黒で塗装すれば良いことに気づいた。ワッシャとナットは黒の手持ちのがある。でも外して再塗装するのはどこかを傷つける恐れがあるので気が進まない。

 

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斜め後ろから。

 

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再び斜め後ろから。

 

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後方から見たところ。

 

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何をどこに繋ぐかはわかるし、インレタは面倒なのでやっていない。

 

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試作から真空管ソケットの向きを90度変更したので放熱穴の一部がソケット固定部で塞がれてしまっているけど気にしないことにする。

 

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シャーシ内部。

 

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反対側から見たところ。電源回路の平ラグ基板をOPT下に持ってきたのだが、RCA入力への配線と干渉してしまいシールド線が使えなかった。結果的には残留ノイズを低レベルに抑えることができたので良しとする。チョーク下にユニバーサル基板で組んだ電源回路を置けばベストだったかもしれない。

 

駄耳の私による試聴結果を書いておくと、スケール感があり超低域は出ないものの必要十分な低音感があり、ピアノの音は柔らかく響くんだけど繊細な曲はそのように再生するし、クロストーク特性はあまり良くないのだが自然な音場感がある。

 

(2017/03/04追記)

私より耳の良い!?妻による試聴結果。

・すっきりさっぱり

・透明感があるというか

・楽しい感じがする

・歯切れがいいからかな

・小さいわりにはけっこう低音が出てるかな

・言葉がはっきりしてるね

・楽器が際立ってこえてくるね