おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

6550 CSPPアンプ・完成

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私は小出力アンプばかり製作しているが、若い頃は大出力アンプへの憧れがあった。でも自室で聴く限り出力はミリワット級で十分とわかった。それで音が気に入れば満足だ。

 

大出力アンプはどうしても重くなる。あまり重いアンプは移動できないので作れないという事情がある。でも真空管アンプビルダーとしては1台くらいは作って所有したいという思いを巡らしていた。

 

いつまで資金が続くかわからないし、何らかの事情で作れなくなるかもしれないし、いつまで体が持つかしれないし、いつまで情熱が続くかわからないし、今のうちに作れるものを作っておこうと考えた。

 

このアンプを製作しようと考えたのは今年の初めだった。高音質を狙うならマッキントッシュタイプCSPPアンプはどうだろう。そこでラジオ技術誌2014年5月号に掲載された、塩田氏によるKT88 CSPPアンプを参考に設計した。

 

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回路図を上記に示す。OPTは染谷電子のASTR-08。トリファイラーでSG専用巻線があるCSPP専用トランスだ。初段は2SK117BLの差動で、2SC1815GRのカスコードでミラー効果による高域低下を防止している。ドライブ段は6N23Pの差動でブートストラップを掛けている。

 

当初は5687WAのセンタータップ付きチョークによるドライブだったが音色に納得がいかず、ドライブ管を6N23Pとしブートストラップに変更した。今思えばドライブ管を5687WAから6N23Pに変更するだけで良かったかもしれない。

 

6550のカソード電流は40mAとし電流を絞っている。CSPPアンプは出力が並列合成となるため原理的にノッチング歪みが生じないため。6550のプレート損失は13Wで軽く使用している。

 

電源部は6550の+B電源を左右別のダブルチョークとしている。これは+Bのリプルの影響でなぜか110Hzの歪率が下がらなかったためで、もっとインダクタンスの大きいチョークなら1個で大丈夫だろう。

 

-C電源は+Bのリターン電流から作っているが、+Bも-C電圧分低くなってしまうので、それを気にする人はヒーター電源から-Cを作れば良いと思う。

 

SG電源は簡易定電圧電源で左右別としている。これは単にリプルフィルタのFETの発熱量を減らしたいため。

 

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諸特性を上記に示す。裸利得が多く、NFB量も13dBと多くなっている。これはドライブ管を5687WAから6N23Pに変更した際、利得の見直しをしなかったため。NFB量が増えたが聴感ではNFB量による影響を受けないことがわかったので本番機でもそのままにしてある。

 

歪率5%での出力は38Wとなった。OPTのインピーダンスを4.4KΩから3.2KΩに変更し+B電圧とSG電圧を上げれば50W出ると思われる。ただそのためには電源トランスの容量を増やす必要があり、さらに重量アップ、価格アップとなってしまう。ドライブ段の見直しも必要だ。

 

ダンピングファクタはブートストラップ分を差し引いても14.3あり十分な値となっている。残留ノイズは最終的に0.1mVを切ることができた。スピーカーに耳を近づけてもノイズは全く聞こえない。

使用測定器

・オシレータ TEXIO AG-205

・ミリボルトメータ LEADER LMV-181B

・オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A

 

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周波数特性。高域-3dB点での周波数は185KHz〜190KHzと広帯域になっている。高域のレベル低下も素直だ。

 

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クロストーク特性。20Hz〜20KHzでは-84dB以下となっている。

 

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Lchの歪率特性。各周波数が良く揃っている。歪率5%での出力は38W。

 
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Rchの歪率特性。各周波数が良く揃っている。歪率5%での出力は38W。こちらのほうが最低歪率が低く、0.009%だった。

 

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シャーシは株式会社奥澤のO-40(W330mm×D220mm×H50mm、t1.5mm)を使用している。裏蓋と合わせてシャーシの強度を保つためカレイナットを4個追加した。穴開けは自分で行っている。シャーシ塗装は奥澤にお願いしてグレーのハンマートーンに塗ってもらった。

 

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正面から見たところ。あんまりきっちり作り込むとメーカー製の劣化版みたいに見えて自作の印象が薄れる気がするなあ?

 

アンプの重量は15.4kgで、当初の見積もりよりすこし軽くなったのはプレートチョークをやめたため。

 

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真空管の放熱穴が袴ですこし塞がれてしまっているのは誤算だった。穴を大きく開け直して落とし込みにすると、サブプレートが電源部の平ラグやアンプ部のユニバーサル基板に干渉してしまうので諦めた。

 

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シャーシサイドにはアクリル板を取り付けている。今回はネジ止めとした。

 

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後ろ側から。RCA端子とヒューズ及びACインレットが寄っているのはRCA端子の位置を2個並びに変更したため。でも案外気にならないかな。

 

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裏側から見たところ。手抜きなし。ゴム足はタカチのRS-60Sを使用。

 

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真空管のアップ。

 

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6550のアップ。

 

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6N23Pのアップ。

 

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シャーシ内部。残留ノイズ低減のためチョークの間に入力のシールド線が通してあったのを迂回させた。CSPPアンプは配線が多いため、どうしてもゴチャゴチャする。

 

駄耳による私の試聴結果を書いておくと、まずNFBが13dBもかかっているのに音質の変化が少ないということ。透明感は抜群だし繊細でスケール感は十分。音場感も良い。ボーカルはオンマイクのように聴こえる。

 

(2017.07.01加筆)

私より耳の良い!?妻の試聴結果。

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・迫力があるね!やっぱり機械が大きいから?  いつも作っているアンプの10倍の出力があるんだ(おんにょ)

・音量が大きくなっても歪まない

・デザイン的には安定していてカッコイイ

・本体の色がいつもと違う  外注して塗ってもらった(おんにょ)

真空管の配置のバランスが良い

・中高音にインパクトがある

・男性ボーカルでも遜色ない

・(女性ボーカル)どちらも良かった

・カラッとした方向に行っている感じがする

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試聴している時に電源トランスの振動を拾って6550の1本の電極が共振しシャリシャリ鳴るのが気になった。時間によって鳴ったり鳴らなかったりするのだろうか。残留ノイズ自体は低いのにね。