おんにょの真空管オーディオ

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古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

PCL83 CSPPアンプ・完成

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戴き物のPCL83を使って真空管アンプを作ろうと考えたのが2017年の3月末。4本あるのでプッシュプルアンプを組みたい。でもDEPPや差動ではつまらないのでCSPPならどうだろうか。

 

OPTは染谷電子のASTR-30Sを使う。これは以前6N6P CSPPアンプを組むのに使ったものだが出力1.5Wではスケール感も小さくなってしまい、実力が発揮されていないように思った。

 

10Kppとし2.5KΩでEp-Ip特性図にロードラインを引いてみると出力は7.2Wくらい。PCL83は3極5極複合管なので低μの3極部をFETとのカスコード差動とし5極部をドライブする回路を考えた。

 

出力段をフルに振るのに必要なドライブ電圧は240p-pくらい。ブートストラップを使わないとすると初段の電源は300Vくらい必要になる。

 

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回路図を上記に示す。赤字は実測値。電源トランスには東栄変成器のPT-22を使い、0-200Vタップをブリッジ整流して+Bを供給する。初段電源は0-280Vタップを半波整流して+B1を供給する。トランスの同一巻線でブリッジ整流と半波整流を共用する変則的な回路だが、半波整流のほうは電流が8mAと少ないので大丈夫だろう。

 

試作当初PCL83の5極部に電流が流れすぎたのでSGに36Vのツェナーを入れて降圧した。Esgは対カソードで186Vとなっている。

 

PT-22は+B巻線の電圧が低めで、+Bは設計より10V低かった。PT-22以外の電源トランスでは適当なものがなく、春日無線の特注電源トランスを使うならO-BS200の65VAが良い。但し価格は9,180円(2017年10月現在)とPT-22より1,000円程度高くなる。

 

仕様の例はこんな感じ。

0-100V         端子数2

12.6V1.2A=15.12VA  端子数3 (0-6.3V-12.6V)

280V20mA=5.6VA   端子数2

200V220mA=44.0VA 端子数2

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合計 64.72VA

 

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アルミシャーシは(株)奥澤のO-46、W250mm×D160mm×H50mm t1.5mmにした。自分で穴開けを行い、トヨタ車用のダークグレーマイカメタリックでスプレー塗装した。コンパウンドで磨きをかけた後にクルマ用のコーティングをかけてあるのですべすべしている。

 

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OPTのASTR-30Sはトランスケースに入れた。ケースはサムテックのTT0031で、サイズはW71mm×D71mm×H76mm。厚み1.0mmの鋼板製のもの。

 

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最終的な特性を上記に示す。高域のカットオフは147KHz〜148KHz。5%歪みでの出力は6.4Wとなり、設計での7.2Wには届かなかった。NFB量は7.8dB〜8.0dBと深め。DFは12.5と十分。残留ノイズは55μV〜62μVと低い。

 

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周波数特性。NFB抵抗と並列に位相補正容量330pFを入れたら高域の小ピークが消えてフラットになった。ピークやディップは見られない。

 

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クロストーク特性。20Hz〜20KHzでは-91dB以下となっている。

 

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Lchの歪率特性。各周波数での特性が揃っている。

 

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Rchの歪率特性。Lchと同様な特性。

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ではいつものようにいろんな角度から撮った画像を掲載してみよう。

 

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左斜め上から。チョークコイルにはナベネジではなくてキャップボルトのほうが良いかなあ?でもあちこち全部やらなきゃいけなくなるような気がする。

 

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右斜め上から。

 

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シャーシサイドにはアクリル板を貼り付けてシャーシの合わせ目を隠している。

 

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AZDAM PCL83の印字がこっちを向いている。

 

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チョークコイルが右に寄っているのは固定穴がシャーシの合わせ目にくるのを避けるため。春日無線のKAC-5120(5H120mA)なら縦型なので電源トランスの正面にくると思う。その分チョークコイルの背が高くなるけど。

 

QQQのMT管ソケットをスペーサーで下付けにしている。シャーシの放熱穴は真空管の冷却ではなく真空管の発熱でシャーシ内の空気を吸い出す目的。但しシャーシ内には発熱するパーツが殆ど無い。

 

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斜め後方から見たところ。

 

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後ろから見たところ。

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裏側から。裏蓋の横幅をシャーシより1mmだけ狭くしただけなのですき間が殆ど見えなくなった。ちなみに裏蓋が同じ横幅だとサイドパネルのために嵌まらなくなる。

 

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シャーシ内部。右下と右上の平ラグが電源部で、電源回路を簡素にしたおかげでコンパクトにまとまっている。アンプ部は15Pの平ラグに収まりきれなかったので6Pの平ラグを追加している。

 

カップリングコンデンサにはアムトランスのAMCOを使ったが、中央2個で静電誘導によるクロストークが生じたのでアルミ板によるシールドを施した。

 

駄耳の私による試聴結果を書いておくと、このアンプの音色を表現するのならふんわりと包み込まれるような芳醇な音の味わい、だろうか。長時間の試聴でも気になる点は全く無かった。刺激的な音を出さないので音量を上げたくなる。スケール感は出力なりといった印象。

 

(2017.10.15追記)

電源トランスが傾いて見えるのでワッシャを入れて高さを調節してみた。ついでに白い絶縁ワッシャ?も黒のマジックで塗った。

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