おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

2A3プッシュプルアンプのメンテナンス

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2A3プッシュプルアンプを買い取りに出そうと思う。もちろんバラしてヤフオクで売ればそれなりの金額になるだろうというのはわかっているがリスクがあるし、思い入れのあるアンプのためにそれができないでいる。

 

これは初歩のラジオの1976年2月号に載っていた藤本伸一氏の記事を元に、学生時代に三栄無線でFA-1000という穴開け済みのシャーシを買い、パーツを集めて製作したもの。後年になってバラして組み直した。当初は出力管が6B4Gだったのだが、2A3をヤフオクで調達した。

 

重量は22kgもあって普段は1階に置いてあるから3階自室へ運び上げるには困難が伴う。鳴らす機会が無くラックの肥やしになるくらいなら手放したほうが良い。

 
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買い取りに出す前にとりあえず特性を測定してみた。出力は27Wも出ていた。でもなんだか高域-3dB点の周波数は低いし利得も低い。記事の入出力特性から利得を読み取ると17.9倍、周波数特性は高域-3dB点が約80kHzとなっている。

 

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回路図と実測の電圧を赤字で示す。回路図を見ているとフト思い当たる点があった。それは初段カソードにDCバランス調整用の半固定抵抗を追加してあること。直結差動2段のため、2段目のプレート電圧が上下でかなり違うことが気になって入れたのであった。この抵抗が5kΩと高いために電流帰還がかかって利得が低下してしまう。

 

DCバランスが取れた時点で半固定抵抗を測定すると上下で約160Ωの差があった。手持ちの半固定抵抗を探したら500Ωのが見つかったのでこれに交換することにした。半固定を削除した時と500ΩでDCバランスを取った時の利得の差は0.4dB、高域-3dB点は1kHzの違いしか無かった。

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回路の電圧を再測定。

 

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再び特性を測定した。利得は18.5倍〜18.9倍だが高域-3dB点は63kHz〜64kHzと低かったので位相補正容量を見直して47pFから33pFに減らしたら84kHz〜85kHzまで伸びた。NFB量は9.9dBだった。

 

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周波数特性。Lchに180kHzでディップ、220kHzに小ピークが見られるが素直な特性だ。

 

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クロストーク特性。L→Rの高域が悪めだが20Hz〜20kHzでは-68dB以下となっている。

 

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Lchの歪率特性。各周波数がよく揃っている。

 

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Rchの歪率特性。こちらも同様だった。

 

特性的にはこれで問題ないと思われる。ただもしこのアンプを買って使う人が現れたら、ハムバランス・DCバランス・バイアス調整・初段DCバランス調整などを行う必要があるので、そういう知識がないと難しいはず。単に真空管の取っ替え引っ替えをして試聴するのでは実力を発揮できない。

 

シャーシ内部を撮影。

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殆ど傷は見当たらないが、シャーシの枠と裏蓋が錆びている。

 

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色が変わって見えるのはフラッシュを焚いたため。

 

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引き取られた後に、私の知らないところでパーツ取りになっても構わない。けれどもし使われる人がいたら特性を保証したほうが良いと考えた。