6J6パラプッシュプルアンプは使っているうちに出力段のDCバランスがずれて100Hzでの歪率が悪化してしまうことがあった。そこでこのWebを参考にメンテナンスフリー化をすることにした。
回路変更部を上記に示す。現状は左で、3.3Ωの両端でDCバランスの検出をしている。これを回路(B)に変更する。560Ω+3.3//3.3Ω → 510Ω+100//100Ωとすることで、「出力段の2管に対してDC領域で帰還をかけプレート電流バランスが崩れにくくなっている」とのこと。
私には理論がよくわからないが、カソード抵抗の1割程度を振り分けることでプレート電流のアンバランスが生じにくくなっていると考えた。
副作用としては信号経路に入れたコンデンサにより超低域特性が悪化するようだ。これは周波数特性を調べればわかるだろう。
変更後の回路図を上記に示す。なおC1の0.015uFは秘伝のスパイス(笑)で、超高域でDEPPの要素を混ぜることで音質を改善するためのもの。20kHzでもC1のインピーダンスは530.5Ωだから特性に変化は生じない。
買ってきたパーツ類。貼り付けボスはタカチのASR-8で、タッピングネジで平ラグを固定する。
平ラグを組み立てたところ。
真上から見たところ。
シャーシ内部。今まであったカソード抵抗を削除し作成した平ラグに配線を接続。
諸特性を測定。低域の周波数特性は変更前と同じだった。メンテナンスフリー化による影響は無いと言える。利得がすこし増えてDFも上昇したのは今回のメンテナンスフリー化によるものか。
周波数特性。変更前とほぼ同じ。
クロストーク特性。20Hz〜20kHzでは-81dB以下で問題なし。
DCバランスを合わせた時のLchの歪率特性。
Rchの歪率特性。
DCバランスを意図的に崩しながらLchの100Hz歪率特性を調べてみた。100Ωの両端に100mVの差が生じたら1mAのプレート電流の差が発生する。1mA刻みで5mAまで測定。
1kHzの歪率特性。
10kHzの歪率特性。
測定当初はプレート電流の差(=OPTのDC不平衡電流)が生じても特性に影響が少ないのではないかと考えていたが、そうではなかった。プレート電流のバランスが崩れにくくなっているというのがミソ。DCバランスを崩しながらの歪率測定は無駄だったのか!?なんてこった。
改造前に2mAのプレート電流の差が生じるようにしておいてから変更したら1.6mAのアンバランスになっていたから、真空管の特性が変化しても影響が少ないというのがこの回路の目的なのだとわかった。
「差動ppミニワッター」は1管に封入された2ユニットで上下のプッシュプルになっていてバランスが崩れにくいのだが、私のは上下がそれぞれ1管なのでバランスが崩れやすいと言える。何回か測定したが最大0.3mA程度のアンバランスが生じていたので、今回の回路変更で実用上は問題ないレベルにあると判断する。