むかし1本150円くらいで入手した6DE7が7本ある。この本数ならプッシュプルアンプが組めるが、かねがねシングルアンプで音を確かめてみたいと思っていた。
6DE7はテレビ用の垂直発振出力管で3極管が2ユニット封入されている。ヒーターは6.3V0.9A。2ユニットのうち右の1ユニットは電圧増幅用でμ=17.5、12AU7に似た特性だ。左のもう1ユニットは電力増幅用でμ=6、rp=925Ω、Pp max=7Wとなっている。
回路図を上記に示す。電圧増幅段はFET-Trカスコード、6DE7の第1ユニットのカソードフォロアで直結ドライブする。この回路は音が自分の好みに合うのでよく使っている。
実験機を組んで無帰還の状態で試聴してみた。澄み切った高域、ウインドウチャイムがキラキラリーン、ただ低音がブンブンいうけど。これはDFが低いから仕方ない。女性ボーカルも魅力的だ。
6DE7シングルアンプの音色を印象づけているのはタマなのか、それともOPTなのか調べてみようと思った。そこで手持ちにノグチのPMF-5WS(画像右)があったのでさくっと交換してみた。
高域が澄み渡り低音にパンチがある。女性ボーカルは艶がある。ニアフィールドの小音量という条件付きだけど。音場感も良く表現される。最近の作品でこんなにクリアなのは記憶にない。どうも6DE7のキャラクターみたいだ。
真空管アンプというキーワードで想像されるような音色では決してない。これなら本番機を組んでも良いだろう。
穴開け図を作成。レイアウトはシンメトリー案を採用。バランス的には良さそう。アルミシャーシはWATZのS254(W250mm×D150mm×H40mm t1.0mm)で裏蓋付き。
シャーシと裏蓋。ダークグレーマイカメタリックで塗装した。
トランスケースはバタ角(W60mm×D60mm×H60mm)を使用した自作。中にPMF-5WSが入っている。
諸特性を上記に示す。周波数特性は高域が伸びている。出力は1.1Wしかないがニアフィールドの小音量で聴くぶんには十分だ。NFBは無帰還での音の印象を変えないため3dBと軽くかけている。詳細な特性はこちらを参照。
真空管ソケットは上付けのものをスペーサーを使って下付けで固定している。これは電源トランスやOPTより真空管を飛び出させないため。
立ラグのステーが放熱穴を塞いでしまっているのは失敗だった。黒く塗れば目立たなくなるけど。
電源トランスを前進させて重量バランスを改善している。とはいってもそんなに重くない。 真空管アンプは重厚長大が歓迎されるが、そういうのが好きな人はそういうのを製作すればいいのであって私はこぢんまりとしたミニワッターが好きだ。
サイドにはいつものようにアクリル板を貼り付けた。
シンメトリーだからどちらから見ても同じ。
トランスの固定ネジが片方はバインドでもう片方はナベ。よく見ないとわからないはず。両方バインドにしようと思っているけど、機会があったらウィルコに発注しようと思う。
駄耳の私による試聴結果は真空管アンプと思えないほどのハッキリクッキリサウンド。音場感も良い。ミニワッターにもかかわらずスケール感がある。特性的には平凡だけど、実験機の試聴での印象を大切にした。
真空管という前世紀の遺物を使うのだから、真空管でしか出せない音を大切にしたい。その上で自分の好みに合う音にチューニングを施した。テレビ球に安価なトランスでこんな音が出せるのかと意外性に驚いている。