むかし8B8全段差動アンプを作ったらヒーターの明かりが綺麗な印象が残っているので、また製作してみたいと思った。
8B8はテレビの垂直発振出力用で電圧増幅3極管と電力増幅5極管が1本に封入されている。ヒーター電圧は8V0.6Aで、ヒーター電圧違いに6BM8(ECL82)・16A8(PCL82)などがある。電力増幅5極管の最大プレート損失が7Wなのであまり出力が取れないが、コンパクトな真空管アンプを組むことができる。
本機の回路図を上記に示す。電圧増幅段はFETと3極管のカスコード差動で、出力段は5極管の3結のやはり差動となっている。ただカソードバイパスコンデンサとして小容量のコンデンサが入れてあり、高域ではDEPPとなるので正確には差動もどきだ。私の音色の好みに合うのでよく使っている。
電源部は+BにFETリプルフィルタ、ヒーター巻線を使って-Cを作っている。
OPTはARITO's Audio LabのDE-8K7Wを使用している。このOPTには出荷検査時の周波数特性データが開示されている。No.93(Lchに使用) No.94(Rchに使用)
諸特性を上記に示す。出力は4.4Wとなった。NFBは、私の製作するアンプとしては深めに9.2dB~9.5dBかけている。周波数特性を調べたら高域にピークが生じていないので位相補正は行っていない。
残留ノイズは無帰還で場合によっては3~5mVにもなり、ヒーターハムを引いていると思われる。8B8を選別して残留ノイズの低いペアをセレクトした。回路で対策するのなら、+Bのリターン電流を一部-Cとして使い、ヒーター巻線にバイアスをかけても良いかもしれない。
私にとってNFBは使いやすい利得に整える、残留ノイズ低減、ダンピングファクタを実用上問題ない程度に引き上げる、などの目的で使っている。
LchのNFB有り無しの周波数特性。
RchのNFB有り無しの周波数特性。
NFBをかけた周波数特性。高域が素直に減衰しており優秀な特性となっている。
クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-66dB以下となった。
Lchの歪率特性。各周波数で曲線が一致している。
Rchの歪率特性。こちらも同様。
SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが発振には至らなかった。(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div[プローブ10:1]、20μS/div)
使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E470 OS Windows10 Home
シャーシはWATZのS-254(W250mm×D150mm×H40mm t1.0mm)を使用している。シャーシは自分で加工し、HONDAのミラノレッドで塗装した。
さて、いつものようにブツ撮りをしたので掲載する。
レイアウトはオーソドックスな配置とし、電源トランス前にブロック電解コンデンサを2本並べた。真空管とコンデンサが近いが、長時間動作させてもコンデンサの温度は40℃程度にしかならないので問題ない。
あ、OPTにはエンブレムが付属しているのだが付け忘れたので、後で貼り付けておこう。
シャーシサイドにははざい屋にカットして頂いたアクリル板を固定してある。
シャーシ内部。平ラグを2個使い、それぞれ+B電源部とアンプ部としている。アンプ部の平ラグに乗らないCRを真空管の近傍の立ラグに配置した。
駄耳の私による試聴結果。出力管の共通カソードに小容量のコンデンサを入れているせいか、女性ボーカルに潤いが感じられる。器楽曲などは音場感や定位が良い。このアンプはOPTによるものなのかどうかわからないが、ドスンという低音が再生される。だから小音量でもスケール感がある。完成当初はあまり繊細感は無かったが、エージングが進むにつれ感じられるようになった。
OPTにエンブレムを貼り付けた。