おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

6P1Pシングルアンプ・回路設計

6P1Pシングルアンプの回路設計をしてみた。

 

コンセプトとしては、真空管が3本のシングルステレオなので2段増幅構成とし、初段は双三極管を使用する。那須好男氏は出力段にKNFをかけていたが、私の場合はオーバーオールNFBとする。

 

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初段はロシアの6N2P-EV(6Н2П-ЕВ)を使う。6N2P-EVの手持ちを調べたら、なぜか10本も出てきたよ。

 

電源部はFETによるリプルフィルタとする。電源部の出力インピーダンスはDC〜数百KHzまで数Ω以下が期待でき、リプル分も低く抑えられるので6P1Pのスクリーングリッドを+B直結とし、初段のデカップリングも省いてしまう。でも大丈夫かなあ?

 

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6P1Pの特性データを見るとうねっていたりして気持ちが萎えてしまうが、要はヘンなところを使わなければ良いだろう。えいやっとばかりに動作点を決めて、5KΩのロードラインを引いてみた。

 

動作点はEb=220V、Ip=40mA、Eg=-12.5V。+Bは出力トランスによる電圧降下を10Vと見積もって、自己バイアスで220+12.5+10=242.5V。電源トランスの電圧はえいやで242.5/1.22≒200V。電流はステレオで95mAくらいか。

 

調べてみると、春日無線のKmB150Fというのが200VのDC95mAで合致する。ノグチのPMC-100Mでも良いが外形がでかすぎる。

 

出力を計算してみる。グリッドが0Vから-25Vまで変化すると、IpとEbはそれぞれ75mA〜5mA、390V〜35Vまで変化する。

 

出力は

(390-35)*(0.075-0.005)/8=3.1W

 

これは出力トランスの損失を考慮していないので、実際は2.8W程度になると予想。

 

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続いて初段6N2Pのロードライン。動作点はEb=133V, Ip=0.85mA, Eg=-1.1Vとしてみた。プレート抵抗は130KΩ、6P1Pのグリッド抵抗を470KΩとすると、交流的には並列となりRL=130K//470K=102KΩとなる。それぞれ130KΩと102KΩのロードラインを引いてある。

 

利得の計算をしよう。6N2Pのrpはデータシートに記載されていないので、特性図から読み取ると62KΩ。μは100±15であるが、今までの経験により低めになることがわかっているので100-15=85とする。

 

初段利得は

μ*RL/(RL+rp)=85*102K/(102K+62K)=52.9 ・・・・①

 

出力トランスを含む出力段の利得の計算。入力25Vp-pは25/(2*√2)=8.84Vrms、出力は8Ω負荷で√(8*3.1)=4.98V、利得は4.98/8.84=0.563倍。トランスの損失を10%とすると、利得は0.563*0.9=0.51倍。・・・②

 

無帰還での利得は①*②で52.9*0.51=27.0倍(28.6dB)

NFBを8.6dBかけるなら、総合利得は10倍(20dB)となる。

 

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なんだかんだで回路図は上のようになった。春日無線のKmB150Fで+B電圧がどのくらい出るのかわからないので、ブリッジダイオード直後の抵抗R7かリプルフィルタの抵抗R8で調節する。

 

リプルフィルタのFETは計算すると1.9Wの発熱があって多めなので、フィルタによる21Vの電圧降下を少なくするかもしれない。その分リプルは増加する。

 

カップリングコンデンサC2は出力トランスOUT-54B-57のインダクタンスが不明なので適当に0.22μFとしてある。低域のスタガー比が取れなくて周波数特性に盛り上がりができてしまったら、値を変更するつもり。

 

高域は出力トランスの特性が素直だと予想されるし、6N2Pのほうが高域の落ちが早いだろうからあまり問題視していない。NFB抵抗と並列にコンデンサを抱かせて微分補正する程度で大丈夫だろうと予想。

 

シングルアンプだから周波数帯域の上下を無理に伸ばさずカマボコ特性にして、ビーム管接続による音を聴いてみようという趣向。でもFETリプルフィルタを使用してビーム管接続にした作例をWebで見ないのは何故だろう?

 

音質向上を狙って三結にしてみました、という例は良く見るから、ビーム管接続=回路が簡単で出力が取れるが音はいまいちで初心者向き、という図式が出来上がっているのかもしれない。