おんにょの真空管オーディオ

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古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

Nationalラジオ R-1025の修理

今回はラジオである。実家からオヤジが生前愛用していたトランジスタラジオを持ってきた。

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National PanasonicのR-1025という型番でAM専用。調べてみると、トランジスタ6石で、2SC839×2、2SA101、2SB175、2SB176×2の構成。電池は単三が2本。回路図は見つからなかった。

 

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電池を入れっぱなしで放っておいたからだろう、電解液が漏れて電池の金属端子が腐食してしまっていた。電池は無かった。

 

錆びた金属端子をリューターで磨き、電池を入れてみたが鳴らなかった。電解液が基板の銅箔を腐食させてしまっているのか?

 

とりあえず簡単な掃除をして原因解析に入る。スイッチが入った状態で電流は6.6mA流れている。電池の電圧は2.93V。オシレータで1KHzを発振させ、ボリュームの中点に接続するとピーッと鳴った。AF部は正常のようだ。

 

オシレータを1KHzの方形波にし、IF部のトランジスタを当たる。問題ない。ところが局部発振・混合の2SC839のベースに加えても鳴らなかった。

 

2SC839の電圧を測ってみた。E:0.58V C:2.93V B:1.16Vで問題ないように思われる。ところが局部発振の波形をオシロで確かめてみたが、発振は認められなかった。

 

バーアンテナのコイルが断線しているのかと思って外してDMMで当たってみても問題ない。2SC839のベースに100KΩの抵抗をVCCに接続してみたら、とりあえず発振するようになった。

 

オシロでバリコンを回すと発振周波数が変化するのを確認。この時点で、NHK第一がわずかに受信できた。他は全く受信できず。選局できるから、バリコンは正常のようだ。

 

ゲルマラジオ並みの感度。蚊の鳴くような音量。一体何が原因なのだろう?

 

きっかけはたまたま基板にミノムシクリップを挟んだことだった。途端に大きな音量で鳴り出した。この機種はプリント基板の表に抵抗が印刷されており、クリップで抵抗への導体パターンを裏面のVCCパターンとショートさせたからだった。

 

調べてみると、導体パターンへは基板の銅箔面からスルーホールのビアで接続されており、ビアの周囲の銅箔が腐食してオープンの状態になっていた。

 

導体パターンは2SC839のベースバイアスを供給する抵抗と別回路にもつながっていて、別回路からベースバイアスが供給されることでたまたま電圧が出ていたのだった。

 

回路的におかしいので局部発振が動かなかったわけだ。原因が判明するまでに3日もかかってしまった。

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スルーホールのビアの周囲で銅箔面が腐食した個所(矢印)。青いレジストがあるため腐食がわかりにくい。

 

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ビアを磨いて部品のリードの切れ端でハンダ付け。これで動作するようになった。ベースバイアスの電圧が出なかったらここを疑っただろうが、たまたま電圧が出ていたことが原因解析を難しくしていた。

 

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修理ができたのでラジオの筐体を外して洗浄した。乾いたら元に戻して修理完了。

 

ネジは選局ツマミとバリコンを固定するだけにしか使われていない。基板も裏蓋もパチンとはめ込むだけ。組み立てにかかる工数をできるだけ削減しているわけだ。

 

このラジオはいかにもラジオ、といった音がする。AF部が入力トランスで、プッシュプルで出力トランス付き、といった回路構成がそういう音色なのだろう。電池は単三が2本のみだが、かなり音量が出てうるさいくらいである。感度も良い。 このラジオはオヤジの遺品で、自分としては特別な意味を持っている。何はともあれ、鳴るようになって良かった。

 

原因究明に時間がかかったので、たまたまヤフオクに出ていた同機種のラジオを落札してしまった。もし動作するのなら、電圧を比較して故障個所を見つけられるだろうと考えたからだ。不動品だったら、修理してみようか。

(2012.05.01追記)

このラジオの音をTASCAMのDR-05で録音し、mp3ファイルにして取り込んでみた。NHK第二の気象通報(約1分)。どんな音かわかって頂けると思う。