おんにょの真空管オーディオ

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古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

5A6 CSPPアンプ・回路設計その1

TU-894の改造がひと段落したところで、もう次の作品を考えている。シングル、シングル改造、シングル改造ときたので今度はプッシュプルだろう。

 

そこで年頭より暖めていた計画を実行に移すことにする。それは5A6のマッキントッシュタイプCSPPアンプだ。

 

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5A6は電池管で携帯トランシーバに使われていたらしい。直熱五極管でフィラメント電圧は5V230mA、もしくは2.5V460mA。

 

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OPTは染谷電子のASTR-30S。とあるBBSで話題になり、希望者を募って50個の頒布までこぎつけたものの、後に製品化される予定だったが2012年10月現在ではその兆しはない。Web上で製作例が増えてくればあるいはその可能性あり、といったところだろうか。

 

CSPPはプッシュプルのカソードが別々である必要があり、5A6のフィラメント電源はステレオで4回路必要とする。そのような電源トランスは市販品では存在しない。ヒータートランスやスイッチングACアダプターをそれぞれ用いての点火が可能だが、スマートにまとめるために電源トランスを特注することにした。

 

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これは春日無線に発注した特注トランスの仕様で、O-BS200型だ。総合計65VA以内。型番はH24-10291。5A6のフィラメント点火には6.3Vを整流しCRフィルタによって5Vを供給する。今回は前段に真空管を使わず、ヒーター電源は省いてその分を+B電源に振り分ける。無信号時の電流の1.5倍の容量がある。これはAB級に移行した時の電流供給能力にある程度余裕を持たせてあるためだが、効果のほどは不明。

 

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5A6のロードラインを上記に示す。マッキントッシュタイプCSPPのロードラインは、ぶっちゃけDEPPのロードラインの引き方と同じで良い。ASTR-30Sは2次側タップで8KΩ・10KΩ・12KΩ(2次側に8Ωの負荷を接続)の3種類が選べるので、それぞれ3本の線を引いてみた。

 

なおEb maxは150Vなのだが、Web上にはEb=225Vの作例があるのでマネする。但し、Eg2は150Vを守る。

 

それぞれの出力を計算してみると、2.5KΩが一番良いようだ。控えめに見積もって、アンプの出力は5Wを目標としよう。

 

マッキントッシュタイプCSPPでネックとなるのが、出力管のドライブ電圧だ。というのは、多極管の利得はgmにもよるが1.4〜1.9あたりと低いので、ドライブ電圧が高い必要があるわけだ。

 

Ep-Ip特性図からμを求めて利得を計算する方法もあるのだが、多極管の場合は曲線の傾きが緩やかになって算出しづらい。えいやで出力管の利得を1.8として計算することにする。5A6はgmが低めで1.8より低いかもしれないけれど、出力の目標は5Wなのでこだわるつもりはない。

 

10KPPの出力は5.75Wと出たので、負荷8Ω時の出力電圧は√(8*5.75)=6.78V。

OPTの変圧比は√(10000:8)=35.4:1

OPTの1次電圧は6.78*35.4=240V

出力管の利得を1.8として、240/1.8=133.3V

プッシュプルだから1管あたりのドライブ電圧で計算、133.3/2=66.7V

必要なドライブ電圧は波高値で、66.7*2.83=188.8Vp-p

ASTR-30Sの損失は10KΩで0.41dB(0.954倍)なので、188.8/0.954=197.9Vp-p

 

というわけで、ドライブ電圧は1管あたり198Vp-pと算出された。

 

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これは前段の回路を示した図で、差動回路の半分のみを抽出してある。前段はFETとTrによるカスコード回路を採用する。

 

動作原理は別のWebを見て頂くとして、ぶっちゃけFETの耐圧をTrで拡大したものと考えれば良いようだ。上の図でいくとロード抵抗は56KΩで、最大振幅は9.4V〜120V〜232Vで222.6Vp-p。一応要求されるドライブ電圧はクリアできていることになるが、ぎりぎりと考えられる。

 

(2012.11.10追記)

出力段のグリッド抵抗を忘れていた。その値を470KΩとすると、交流的には56KΩと470KΩの並列となるので56KΩ//470KΩ=50KΩ、最大2mA×50KΩ=100Vが120Vを中心に上下することになる。即ち200Vp-p

(追記ここまで)

 

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次は出力段の回路を示した図で、カソード抵抗値を求めるもの。OPTの1巻線の抵抗は約112Ω。5A6のIsg=6mAとすると、カソード電流はIk=20+6=26mA。OPTの降圧は112*0.026=2.9Vとなる。 グリッドバイアスは-C回路から供給され、-2.5Vとするとカソード抵抗は7/0.026=270Ωとなる。

 

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現状の回路設計結果はこんな感じとなっている。Esgはツェナーダイオードで75V落として、カソードに対し150V。今回は-C電源に+Bのリターン電流を利用している。ダイオードの8本直列で-5.6V位か。

 

+B回路は2段CRフィルタの簡易型で、スケール感に影響する(と思われる)C10のみ330μFに増量している。フィラメント電源は2段のCRフィルタだが、5A6のDCバランスが取れればハムノイズを少なく抑えられるはずなので三端子レギュレータは使用していない。

 

5A6のドライブ電圧がぎりぎりなので、対策としては初段カスコードにもっと高い+Bを供給する等の方法が考えられるが、電源回路が複雑になるのを避けるためブートストラップの使用も考えている。

 

ブートストラップは一種のPFBなのだがFET-Trカスコード回路の場合、効き過ぎてダンピングファクタの低下や歪率の悪化を招く危険がある。実際両方組んでみて気に入った音色のほうを採用しようと考えている。

 

というわけで、次回はブートストラップを使った回路設計の予定。