またまた基礎実験である。今回はヒーターのソフトスタートに関する実験だ。
実験台は4本の8B8で、ヒーター定格は8.2V0.6A。これを直並列とし、ACアダプタで点火する。ACアダプタは秋月の19V3.4Aを使用する。
8B8の冷間時におけるヒーター抵抗は実測平均1.95Ω。上記の回路の合成抵抗は3.9Ωとなり、19V/3.9Ω=4.9A流れるのでACアダプタの保護回路が働いてしまい起動できない。
そこでヒーターのソフトスタート回路を採用することにした。FETは低オン抵抗のものを使用する。2SK3355は以前、ソフトスタート実験に使用しようと思って買っておいたもの。秋月なら2SK2232などがある。プリヒートではR4に電流が流れ、FETのゲートに接続されたR1を介してC1を充電し、ゲートのVTを越えるとFETがオンしてR4をショートする。2SK3355のVTは25℃でカタログ値が2.7Vくらい。
さて、ACアダプタにはヒーターだけでなく前回の評価で使ったDC-DC新バージョンを接続する。このDC-DCを出力210V90mAで動作させると、入力には1.5A流れる(実験済み)。だからヒーターのプリヒートに回せるのは3.4A-1.5A=1.9A。R4は6.1Ω以上と算出されるが余裕をみて8.2Ωとした。
R1とC1で構成される時定数は短いほうがR4を発熱させずに済むが、プリヒートの時間を確保しなければACアダプタの保護回路が働いてしまう。実験でR1とC1をフィッティングした結果、R1=330KΩ、C1=220uFで電源投入後FETがオンするまでの時間は約12秒となった。
http://www.youtube.com/embed/sMC5HAgvVsU
この様子をYouTubeにアップしたのでご参考。左のテスターはDC-DCの出力電圧を、右のテスターはFETと並列に接続された抵抗R4の電圧を示している。
電源を入れると約12秒でR4の電圧が12V→10V弱となる。スタートの12V/8.2Ω=1.5Aがプリヒート完了で10V/8.2Ω=1.2Aに減る。その後、FETのゲート電圧がVTを越えてオンし、R4をショートする。これで通常の動作となり、ヒーターが点灯する。YouTubeでは点灯の様子がわかりにくいと思うが。
FETがオンした後のR4両端電圧は6.2mVで十分低い。これならFETの発熱は無きに等しい。