ECC88(6922)全段差動DCDCミニワッターは周波数特性の高域が波打っているので、発振に対する安定性はどうなのか、以前から気になっていた。
この安定性評価には、方形波観測しながらSP端子にコンデンサを入れてリンギングを見るやり方がある。他にはNFB抵抗の代わりにボリュームを入れ、抵抗を減らしていってどのくらいになったら発振するかを確かめる方法もある。
今回は前記の2つのやり方とは違う、ループゲインが0dBとなる周波数での位相余裕を調べるという、最も面倒な方法を試してみた。
具体的にはNFBの配線を初段ゲートに戻しているところでカットし、入力信号とNFB信号との位相差を2現象オシロで観察することにする。
まず始めにオープン・ループゲイン、クローズド・ループゲイン、帰還定数β、ループゲインを調べてみた。ループゲインがそれぞれ3.87dB、3.66dBとなったので、これが0dBとなる周波数での位相余裕をチェックする。
LchにおけるNFB無しでの利得、NFB有りの利得、ループゲインを示す。ループゲインが0dBとなる周波数は70KHzで、その時の位相遅れは77°であった。これは位相補正のコンデンサ無しの値だ。
位相余裕は発振条件である180°からどの程度ずれているかを見る。180-77=103°となり、一般的な適正値の下限は60°ということなので十分余裕がある。
位相補正コンデンサ(1500pF)を入れると位相遅れは62°となり、180-62=118°でさらに余裕が生まれる。
いちおうループゲインが0dB未満の周波数でも調べたので記入しておいた。
Rchも同様に調べてみた。ループゲインが0dBとなる周波数は60KHzで、その時の位相遅れは70°であった。位相余裕は180-70=110°となり、Lchと同様十分余裕がある。
位相補正コンデンサを入れると位相遅れは57°となり、180-57=123°となった。
以上は高域の位相余裕だが、低域になると2現象オシロの輝線がゆっくりになって観察しにくい。10Hzでも利得があってさらに低い周波数で見る必要があり、実験はしないことにした。
本当は位相特性のグラフを描こうと思ったのだが、周波数特性の高域になるとNFB信号が数mV程度になってしまい、入力信号との比較が困難になるのでやめた。だからゲイン余裕は調べていない。
2現象オシロを使う方法は、この他にリサージュ波形を観測するものもあるが、楕円形だから位相差は何度?というのがそもそもわからないし、実際にチェックするのは困難だと思う。
また、2つの波形の位相差を調べるにも、オシロの画面上でそれぞれの波形の振幅を一致させる必要があり、半周期が180°だから遅れ分の比率から何度と割り出す必要があり、大変面倒な方法であることを記しておく。慣れれば簡単なのかなあ?
今回の実験に関し、木村氏著「真空管アンプの素」P.172〜176を参考にさせて頂いた。もし詳しく知りたい方は、そちらを参照して下さい。