まず始めにお断りしておきますが、決して音の良い(劣化の少ない)ボリュームを選ぼうという趣旨ではありません。ボリュームの音質の違いがわかる、耳の良い人にはそういうことは全てお任せして、駄耳の私としては性能の違いを見出す目的でこの実験を行いました。
ボリュームはガリの無いことが前提で、ステレオで使う場合は2連ボリュームの相互偏差の少ないものが望ましい。よくあるのがボリュームを絞った時、音が左右どちらかに偏ってしまうこと。
また、ボリュームを絞り切っても小さい音で鳴っていたりする。また。最大音量にしても抵抗が0Ωにならない場合、プリアンプ経由でメインアンプのボリュームをスルーで使っている時に損失が生じてしまう。
以前、拙ブログにてRK27ボリュームの偏差について調べたことがあったが、回転角度は目分量で測定していた。これを全円分度器で測ったら精度良く測定できるのではないかと気がついたのでやってみることにした。
真空管アンプにボリュームを取り付ける場合、かなりの確率でボリュームと真空管ソケット、ないし立ラグが干渉するのでシャーシ加工の際に注意しなければならない。性能の良いボリュームとしてはALPSのRK27が一般的に知られているように思うが、このボリュームはサイズがかなり大きいのでできれば小さいものを使いたい。
今回、RK27に加えてRK16312、RK0971210について評価を行ってみた。門田無線でRK27112Aは820円、RK16312は276円、RK0971210は260円(2014年2月現在)でかなりの開きがある。
なお、サンプル数はそれぞれ1個ずつなので、もっと多くの数を調べれば傾向(バラツキ)がわかってくると思うけど、こんな面倒くさい、ちまちました実験を個数を増やしてやるのは大変なので、やりたいと思う人はやって欲しい(そんな人いないってば)。
それぞれのボリュームは使い古しのシャーシに取り付けて評価した。
ALPSのWebページを見ると、RK271シリーズの電気的性能として相互偏差が-70dB〜-60dBで3dB max、-60dB〜0dBで2dB maxとなっている。RK16312、RK0971210は相互偏差のスペック自体が無い。相互偏差は1dBを超えるとかなりの人が音の偏りに気づくらしい。
はじめにRK27112Aから。左右の偏差が少なく良く揃っている。
相互偏差は-60dBまでなら0.4dB、それ以上では最大0.5dBとスペック以内に収まっている。これ位ならどちらかに偏っていることを意識することはないのではないかと思う。なお、-60dBというのは、だいたいボリュームの回転角度が5%前後の値となった。
次にRK16312。相互偏差のあることがわかる。
相互偏差は-60dBまでなら-1.2dB、それ以上では最大-0.8dBとなっている。スペックは規定されていないけれど、RK27112Aのスペック内には収まっている。これくらいの偏差なら、抵抗を入れることで補正可能と思う。補正のしかたはこちらが参考になる。
補正抵抗470KΩ、220KΩで±0.2dB以内に収まった。
最後はRK0971210。殆ど偏差は見られない。ところが・・・。
相互偏差は-60dBまでが最大-3.7dB、それ以上では最大-0.8dBとなった。特に回転角度5%は測定しなければわからなかったのに、という数値だ。ツマミの位置を9時以上で使う限り偏差は±0.2dBに収まっており問題ない。
ボリュームを絞っていくと左右どちらかに音量が偏る、という典型的なパターン。これは補正のしようがない。どっかんボリュームになる(利得の多い)パワーアンプに使ったら問題となるだろう。
プリアンプが前提ならパワーアンプはほぼ最大音量にするから大丈夫。これを気にするかどうかはユーザー次第。ヘッドホンで使っていたらボリュームを絞るたびに音が偏るから気になるかも。
おそらく個体差だろうから、多めに買って選別するという手がある。ボリュームを選別って…。でも1個260円で4個買って1,040円だから、そのうちの程度の良い1個が使えたら良いと思う。
今回の実験から、やはり安いボリュームは偏差が生じがちであることが確かめられた。でもRK16312なら十分補正可能だし、RK0971210なら音量を絞った時に偏差が生じることを考慮して使うぶんなら問題ない。
(2014.02.19追記)
RK0971210の名誉挽回!のために、もう1個のサンプルで測定してみた。
カーブ自体は問題ないのだが…。
相互偏差は1回目に測定したサンプルと同一の傾向になった。9時より大きければ±0.2dBに収まっているし、問題はないけれど。
というわけで、残念ながら名誉挽回にはならなかった。別ロットなら違う可能性はあるんじゃないかな?