真空管アンプにおけるカップリングコンデンサの耐圧についてアホバカ理論を展開してみた。
カップリングコンデンサはDCバイアス電圧に信号が重畳されるが、そのピーク電圧を耐圧に考慮する必要があるかどうか、という記述を見たことがないんだよね。
はじめての真空管アンプ 黒川達夫著 P.125 から引用
「動作中に掛かる電圧は回路設計の段階で予測できるので,これをもとに,どのような場合でも印加電圧が耐圧範囲内を越えることのない定格のコンデンサーを選択します.また,コンデンサーは誘電体の絶縁性能が失われるとショートなどにより大きな電流が流れ,アンプ全体に故障が拡がる場合があります.これを避けるため,定格耐圧一杯で使わず,少なくとも20%から場合によっては100%の耐圧余裕(定格耐圧が使用電圧の2倍)の製品をあてがうようにします.」
印加電圧は対極の電位が固定されていれば印加電圧そのものとなるが、カップリングコンデンサは異なり、交流的にはショートとみなせるのでDCバイアス電圧のみを考慮すれば良いはず。ただし、実際は位相があるのでそうとも限らない。
そこでLTspiceを用いて実際のコンデンサの極板にかかる電圧をシミュレーションしてみることにした。
シミュレーション回路図を示す。単純化のためにDCバイアス電圧は200Vとし200Vp-pの交流電圧を加え、コンデンサの容量は1μF、出力に470KΩの抵抗を接続した。
周波数は1KHz。VINとVOUTの差分を赤線で示す。ピークは200.07Vとなった。
周波数を10KHzにしてみた。VINとVOUTの差はピークで200.007Vとなり、DCバイアス電圧の200Vに近づく。
今度は周波数を100Hzに下げてみた。VINとVOUTの位相差のためにVINとVOUTの差は大きくなり、ピークで200.7V。
ついでに10Hz。VINとVOUTの差はピークで206.4Vとなった。周波数が低くなるほどピーク電圧は高くなるけど、大したことはないような。
シミュレーションから得られた結果から考えると、カップリングコンデンサの耐圧は、信号の重畳による極板の電位差は大したことはなく、DCバイアス電圧を考慮すれば良い。但し、黒川氏の引用文中にあったように、定格耐圧一杯で使わず少なくとも20%の耐圧余裕を持たせる必要がある、となる。
シミュレーション条件を悪く、例えば低い周波数でグリッド抵抗R1の値を低くすれば信号電圧のピークを考慮する必要が出てくる。
DCバイアス電圧を200Vとし、周波数10Hzで200Vp-pの交流電圧を加え、コンデンサの容量は1μF、出力に100KΩの抵抗を接続した場合、VINとVOUTの差はピークで225.4Vとなった。
上記は極端な例だけど、DCバイアス200Vに対して+20%を加味して240V、実質250V耐圧のコンデンサを使えば良いので、やっぱり信号の重畳を気にする必要はないような。
なお、上記アホバカ理論は自己バイアスの場合なので、固定バイアスでは違ってくる。念のため書いておこう。