3A5はフィラメントを並列にし、1.4V0.22Aとしている。それを3本並列にしているため、1本のフィラメントが切れると供給電圧が上がってしまう。
電池管のフィラメント断線はうっかり過電圧をかけたりする場合が多いと想像するが、仮に1本が断線すると残りの2本に負担がかかってしまう。
何か対策をしたほうがいいかな、と思っていたが良い案が浮かばなかったのでそのままになっていた。3A5はフィラメントが灯っているようすが外からでは全く確認できない。しかも2本ないし1本が生き残っていればちゃんと音が出てしまうので不具合に気づかない。
フィラメント電圧が上昇してしまうのを防ぐにはツェナーダイオードを入れれば良いが1.5V程度のツェナーダイオードなんて無い。LEDをフィラメントと並列に入れて明るさで監視する方法も考えられるが、過電圧がかかると壊れて点灯しなくなってしまうかもしれない。
いろいろ考えた結果、ダイオードを並列に入れることを思いついた。ダイオードの順方向電圧VFは大体0.7V〜1.0Vなので2本直列にすれば良いのではないか。
そこで、実験で3A5を断線させてしまうには忍びないので、LTspiceでシミュレーションしてみることにした。
D3・D4が追加したダイオードで1N4007を使用。I1は3A5の3本並列で0.66A。
出力電圧は約1.42VでD3・D4には最大20mA流れている。
3A5が1本断線したと仮定して、I1は0.44Aとしてみた。
出力電圧は約1.61Vまで上昇、D3・D4には最大200mA弱流れている。
3A5が2本断線したと仮定して、I1は0.22Aとしてみた。
出力電圧は約1.69Vまで上昇、D3・D4には最大400mA流れている。
じゃあ3A5が全部断線しちゃったら?
出力電圧は約1.74Vまで上昇、D3・D4には最大600mA流れている。
シミュレーション結果から、フィラメント供給電圧は約1.74Vまでしか上昇しないし、最大で600mAなので1N4007の最大定格である1Aには達しないことがわかった。
3A5が3本断線したら保護する意味はないし、音も出なくなってしまうからすぐわかる。2本断線してもフィラメント供給電圧は約1.69Vまでしか上昇しないので断線は避けられるのではないだろうか。
実験したフィラメント電源の回路図を上記に示す。AC100Vが102.2Vの時にダイオード無しでの供給電圧は1.51Vあった。結構高い。
次にダイオードを入れたら1.48Vまで下がり、ダイオードには22mA前後流れた。
3A5を実験で断線させてしまうのは嫌なので、3A5を全部外して電圧を測ってみたら1.8Vだった。ダイオード1本当り0.9V。
上記に1N4007におけるVFとIFのグラフを示す。VFが0.9Vの時でのIFは0.7Aと読める。最大規格の1Aには一応満たないことがわかる。
ダイオードを追加したシャーシ内部。どこだかわかるかな?
フィラメント供給電圧は1.44V〜1.48Vで安定しており、ダイオードを入れることで、ある程度定電圧に保たれることがわかった。これで仮に1本の3A5のフィラメントが断線しても他の2本を道連れ、という最悪の事態は防げるのではないだろうか。