以前から整流に使えるダイオードの耐圧はどのくらい必要なのかよくわからないままだった。そこでLTspiceを使用して代表的なブリッジ整流及び全波整流について調べてみることにした。
はじめにブリッジ整流回路を上記に示す。入力はAC100Vとした。
Voutの波形を赤で示す。ピーク電圧はほぼ100Vの√2倍で、VT×2の分だけ差し引かれている。また、D3にかかる逆電圧を青で示した。ほぼ-100Vの√2倍で、VT分だけ差し引かれている。
すなわちダイオードの理論上の耐圧は、入力AC電圧の約1/√2倍となる。1N4007のピーク繰り返し逆耐圧VRRMは1000Vだから、入力AC電圧の最大値は707Vとなる。
ところが、東芝の1NU41のデータシートを見ると最大定格の50%以下が目安と書かれている。すると707/2=354Vがメーカーでの最大定格となってしまう。木村哲著「真空管アンプの素」P.133には現実的な値として500Vと書かれており、これが妥当な値なのだろう。
ブリッジ整流でのダイオードの耐圧はVRRMの半分、と覚えておけば間違いない。
つづいて全波整流回路を上記に示す。入力はAC100Vとした。
Voutの波形を赤で示す。ピーク電圧はほぼ100Vの√2倍で、VT分だけ差し引かれている。また、D1にかかる逆電圧を青で示した。ほぼ-100Vの2√2倍で、VT分だけ差し引かれている。
すなわちダイオードの理論上の耐圧は、入力AC電圧の約1/2√2倍となる。1N4007のピーク繰り返し逆耐圧VRRMは1000Vだから、入力AC電圧の最大値は353Vとなる。
ブリッジ整流と同様に全波整流のメーカーでの最大定格を求めると353/2=176.5Vとなってしまう。なんか低すぎない? このことに関して、木村哲著「真空管アンプの素」P.133には現実的な値としてAC250Vと書かれている。
全波整流でのダイオードの耐圧はVRRMの1/4が目安。
真空管アンプでは+Bがトランスの端子電圧で250Vを超えることはよくあるわけで、では全波整流ではどうしたらいいのか、というとダイオードを直列にする方法がある。
D1の両端電圧波形を青で示す。ダイオードを2個直列にすることで逆電圧は1個だけに対し半分となる。1000V耐圧のダイオードなら入力AC電圧の最大値はAC500Vまでとなり、これならまず問題が起こることは無いだろう。
次に使用電流だが、1N4007における平均順電流IFは1Aとなっている。ディレーティングを考慮するとその20%が現実的な使用電流となるようだ。IFが1AならDC200mAといったところ。ダイオードは並列にするとどちらかに電流が偏ってしまうために並列使用は不可。電流がもっと欲しければ平均順電流の大きいダイオードを使うのが良いと思う。