CV4055シングルアンプの初段は6N2Pを使っている。これはデータシートでのμは100、アンプの総合利得は22倍と高い。では初段に6AQ8はどうか。μは57なので使いやすい利得まで下がるのではないか。ピンアサインが同じなので差し替え可能だ。
ということで、ヤフオクでタマを3本落札した。ECC85は6AQ8と同等らしい。評価にはElectro Harmonixの6AQ8を使った。
評価するにあたり、6N2Pの場合と同じくらいのNFB量でないと比較できないだろう、というわけで10dB程度のNFB量となる抵抗値を調べたところ2KΩとなった。裸利得自体が下がるので、NFB抵抗値を減らさないとNFB量が減ってしまうわけ。
特性に何か違いが出るのだろうか、というわけで早速調べてみた。
諸特性を上記に示す。総合利得は14倍と使いやすい利得まで下がった。NFB量は10.7dBと10.3dBとなった。食い違っているのは裸利得の差によるもの。残留ノイズはLchが増えてしまったが6AQ8の個体差だろう。
周波数特性。高域のレベルが上がっている。-3dB点は110KHz。これはNFB抵抗と並列に入れてある位相補正用の220pFを変えなかったためと思われる。
クロストーク特性。Lchの残留ノイズが多いために曲線が重ならないが、6N2Pの時と同じカーブを描いている。20Hz〜20KHzでは-55dBを確保。
Lchの歪率特性。5%歪みでの出力は110Hzがリミットして2.1Wで、6N2Pの時と同じだった。カーブも一緒。なお初段カソード抵抗を減らして歪率を見てみたが殆ど変わらなかった。
Rchの歪率特性。110Hzがリミットして出力は2.1Wで、6N2Pの時と同じだった。カーブも一緒。
結果は位相補正容量を増やせば6N2Pと同じ特性が得られるものと思われ、利得が下がって使いやすくなると予想される。
さて、ここからが本番で、試聴を6N2P/6AQ8/ECC85に差し替えながら数日にわたって聴き比べてみた。NFB抵抗と位相補正コンデンサを変えないので厳密には正しい比較とはいえないが、それぞれのタマが持つ音色は聞き取れるだろう。
結果は6AQ8/ECC85では中高域の透明感はあるものの、なぜか特徴のある低音が後退したように感じた。DFは6AQ8/ECC85のほうが低いはず。低域の周波数特性は同じなので原因はよくわからない。6N2Pに戻すとスケール感が増し、高域の澄んだ感じが印象的。
結論は、CV4055シングルアンプ2号機では6AQ8/ECC85より6N2Pのほうが合っていると思う。本番機では6N2Pを採用し、6AQ8/ECC85を差し替えて楽しむようにしたい。