実験機を評価したところたくさんの問題点が見つかった。1つ1つ潰していった内容を書き記してみよう。
①+B1・-C用電源を安定化
これはSV811-10Aのグリッド電流が流れると+B1電圧が下がり、-C電圧がわずかにマイナス側へ増えるため、グリッド電流が小電流でも飽和し、またグリッド電圧がさらにマイナスへ動き出力の増加を制限してしまう。+B1と-C用電源を安定化することにより出力アップが望めるのではないかと考えた。
禁断の出力15W時のグリッド電流波形、ピークで約78mA!(10:1のプローブ使用、10Ω両端波形)データシートでの最大定格は50mAとなっているので良い子はマネしちゃいけません!!
②SV811-10Aの異常電流とドライバー球の変更
ドライバーの6L6GCのヒートアップ時に、SV811-10Aのプレート電流が一瞬ドーンと200mAくらい流れる。6L6GCのグリッド電圧をモニターすると、固定バイアスにもかかわらずバイアスが浅くなっていき正電圧となり、6L6GCの電流が流れ始めると同時にカソード電圧が浮く。6L6GCカソードとSV811-10Aグリッドが直結なのでSV811-10Aに異常電流が流れるというわけ。
6L6GCのグリッドバイアスに誤配線は発見できず、別のタマならどうかと思い手持ちのElectro Harmonixの6V6GTに差し替えてみたところ現象は起こらなかった。結局SVETLANAの6L6GCに何か問題があると思われるが、6V6GTに替えて評価をすることにした。
③初段のFETを2SK30AGRに変更
SV811-10AのKNFをやめて利得を測定したところ80倍もある。測定間違いと思ったが何度測定しても同じ。KNFが6dBもかかるとは思えず、前回測定した1.2dBの値がKNF無しで飽和していた可能性もあるが原因不明。
裸利得が80倍もあったのでは困るので、FETを2SK117から2SK30AGRに変更した。GRランクなのはたまたま何かに使った2本のペアがあったからで特に意味は無い。また、初段の+B2(=255V)を動作電圧拡大のため+B1(=280V)に変更した。
+B2は使わなくなってしまったが、電源をオフするとSV811-10Aは直熱管のためプレート電流が急に減り+B電圧がなかなか下がらない。+B2のツェナーに電流を流していることで1〜2分で数Vまで下がるため回路をそのままとした。
④OPTの1次インピーダンスを7KΩから5KΩに変更
OPTの1次インピーダンスを変えて歪率5%での出力を測定してみた。結果は5KΩのほうが出力が出ることがわかった。これは+B1や-C電源の安定化でグリッド電流が頭打ちとなることがなくなり、低いプレート電圧ではロードラインの傾きを立てたほうが最適化されるため。また、プレート電流は60mAがベストと判断した。
その他
⑤初段の半固定抵抗を500Ωから1KΩに、NFBのため47Ωを追加。
⑥6L6GCのグリッドバイアス回路に22uF350Vのコンデンサを追加。これは意味ないかも。
⑦SV811-10Aグリッドのツェナーを180Vから75Vに変更。これはプラス方向のクランプ電圧を下げてSV811-10Aのプレート電流を制限するため。
⑧6V6GTのヒーター直列抵抗を0.44Ωから1.1Ωとした。6L6GCの0.9Aに対し6V6GTは0.45Aと電流が少ないため。
⑨SV811-10Aのフィラメント電源回路の0.1Ω10Wを0.12Ω10Wに変更。これでフィラメント電圧は6.4Vになった。 これらの変更によりNFB無しで8W以上(1KHz)出るようになった。当初のミニワッター0.8Wからの大躍進だ。
次回はNFBをかけて特性評価を行う予定。