おんにょの真空管オーディオ

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古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

EL32シングルアンプ・フルモデルチェンジ

EL32シングルアンプは解体してしまったわけだけど、EL32は手持ちにたくさんあるし、いずれまた新たに製作しようと考えている。

 

コンセプトは初段FETでTrカスコード、エミッタフォロア直結でEL32を振る回路方式でEL32は三結とする。なるべくコンパクトに組みたい。

 

再設計するにあたり、トランス類は再利用する。電源トランスはTANGO ST-55S、OPTは春日無線のKA-5730とする。

 

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最初にEL32の三結Ep-Ip特性図に7KΩのロードラインを引いてみた。動作点はEb=241V、Ip=25mA(Isgを含む)、Eg=-20V。

 

仮にこのロードラインを一杯に振ったとして、すこしだけグリッドの+領域を使ってプレート電圧は410-80=330Vp-pで振れることになる。無理やりrmsに直すと330/2.83=116.6Vrmsとなる。

 

OPTの変圧比は√(7KΩ:8Ω)で29.6:1となり、OPTの2次側では116.6/29.6=3.94Vrmsとなる。これを電力に直すと3.94^2/8=1.94W、OPTの損失を20%とすると1.94*0.8=1.55Wとなる。即ち最大出力は1.6Wくらいかな。

 

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続いて初段の設計。LTspiceを用いてさくっとやってみた。2SK117の電流は1.3mA、無信号時のVoutの電圧は56Vとした。サイン波の片側0.23Vピーク入力で82.4Vp-pの出力、利得は45.34dB(184.9倍)となった。

 

データシートよりEL32三結のμ=8、rp=7KΩなので、利得は184.9*8*{7000/(7000+7000)}/29.6=25.0倍、OPTの損失を考慮すると20倍くらいかなあ?NFBをかけて10倍といったところ。

 

EL32のカットオフを無理やり予想すると-66Vくらいで、初段を最大に振った時が-68.4Vとなったのでギリギリ、振りきれないかもしれない。フルに振るためには初段の電源電圧を上げて120V程度とし、無信号時のVoutを60Vくらいにすれば良いが、EL32のプレート電圧(Eb)が減ってしまうので痛し痒しという感じ。この時はグリッドをプラスに振っているわけだけども、どのくらい振ったらグリッド電流がどのくらい流れるかわからないので無視している。

 

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+B電圧はカソード電圧が56+20=76V、Eb=241V、OPTによる降圧は1次巻線DCRが実測324Ωで25mAでは8Vで合計すると325Vとなる。これより電源トランスの+B巻線を計算すると325/1.25=260V。ST-55Sの20V〜280V間をブリッジ整流すれば良い。この1.25という値は経験値でまあこんなもんかな、というもの。

 

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詳細な回路設計をしてみた。Q1とQ2は手持ちがたくさんある2SC2752とした。Vceoは400Vあって耐圧は十分。hFEは40〜80と低くてエミッタフォロアでも寄生発振が起こりにくいはず。

 

VR1の抵抗を低くすると初段の電流が増え、EL32のグリッド電圧が低下しカソード電圧も低下するのでIpが減る。逆にVR1の抵抗が高くなると初段の電流が減り、グリッド電圧が上昇しカソード電圧も上昇するのでIpが増える。

 

VR1を回してEL32の動作点が変えられるわけだがロードライン上を移動するわけではなく、動作点を中心にロードラインが動くのは同じ。オーディオアナライザで歪率を見ながらVR1を回し、歪率が下がるようにVR1を調整すれば良いはず。

 

TANGOのST-55Sは入手困難だと思うので、代替え品を探すならノグチトランスのPMC-95Mがある。2次巻線の140V〜0〜120Vの260Vをブリッジ整流すれば良い。電流は両波整流100mAの60%で60mAだから大丈夫。

 

なんかもう途中で計算が間違っていたりして、ちょっとでも動作条件を変えるとあちこち波及してその度に見直さなければならないし、こんな面倒くさいことを他の人もやっているのだろうか。理詰めできちんとできればいいけど、私の場合テキトウが混ざってるし。

 

このフルモデルチェンジで特性的には出力は変わらず、低域と高域が伸び、ダンピングファクタは増えるだろうと予想する。音質的には私が製作してきた直結シングルアンプと同様なものになると思う。