6DJ8パラシングルアンプは高域特性に暴れが見られるので、発振に対する安定性はどうなのか確認することにしよう。
周波数毎の位相余裕を調べるのが一番なのだが、測定が面倒なのでループゲインが0dBとなる周波数での位相余裕を調べる方法とした。
NFBの配線を初段FETのソースに戻しているところでカットし、入力信号とNFB信号の位相差を2現象オシロで観測する。
始めにオープン・ループゲイン、クローズド・ループゲイン、帰還定数β、ループゲインを調べてみた。
ループゲインはオープン・ループゲイン×帰還定数βで求まる。 ループゲインはそれぞれ1.80dB、1.95dBとなった。案外低いんだね。これが0dBとなる周波数での位相余裕を確認する。
クローズド・ループゲインが合っているのが計算してみた。オープン・ループゲインとクローズド・ループゲインは実測値だが、ほぼ一致していることがわかる。
LchにおけるNFB無しでの利得、NFB有りの利得、ループゲインを示す。ループゲインが0dBとなる周波数は32KHzで、その時の位相遅れは33°であった。
位相余裕は発振条件である180°からどの程度ずれているかを見る。180-33=147°となり、一般的な適正値の下限は60°ということなので十分余裕がある。
ちなみにピークがある105KHzでは-45°で位相余裕は135°、120KHzでは-70°で位相余裕は110°といずれも余裕がある。グラフには書き込んでいないが360KHzでは-51°で位相余裕は129°だった。
Rchでも同様に調べた結果を上記に示す。ループゲインが0dBとなる周波数は30KHzで、その時の位相遅れは35°であった。位相余裕は180-35=145°となり、Lchと同様十分余裕がある。
ピークがある105KHzでは-25°で位相余裕は155°、120KHzでは-43°で位相余裕は137°といずれも余裕がある。グラフには書き込んでいないが330KHzでは-42°で位相余裕は138°だった。
いずれも発振に対し安定であり、発振の可能性は低いという結果になった。
今回の実験に関し、木村氏著「真空管アンプの素」P.172〜176を参考にさせて頂いた。もし詳しく知りたい方は、そちらを参照して下さい。