PCL83 CSPPアンプはDCバランス調整を半固定抵抗で行っている。これを自動化したらどうなるのか検討してみた。
検討にはラジオ技術2016年1月号の塩田氏による「6AH4CSPPアンプの製作」を参考にさせて頂いた。
回路図を上記に示す。Q1とQ2は差動回路で、カソード電流を10Ωの抵抗で検出し、グリッドへカソード電流の変化を抑えるように働き、自動的にバランスする。自己バイアスなのでなるべく調整箇所を無くしたい。回路図の7.5KΩをフィッティングしカソード電流を決定する。
厳密には5極管なので、プレート電流の他にSG電流が加わるのでOPTのカソード巻線のDCバランスだけではバランスが取れるわけではない。手持ちの4本のSG電流はそれぞれ3.4mA〜3.5mAであった。ワーストで0.1mAの差があることになるが、CSPP用OPTはプレート巻線だけでなくカソード巻線もバランスさせなければならず、SG電流のバラツキは無視して考えることにした。
LTspiceで簡易的なシミュレーション回路図を作成し、パラメータフィッティングを行った。例えばカソードに低周波の最大振幅を与えると、それを抑えるようにグリッド電圧が変化してしまう。今回は10Hz・54mAが電流検出抵抗10Ωに加わるとした。カソードにはDC24mA流れているのでV3,V4のオフセットは0.24V、Amplitudeは0.76Vとなる。
シミュレーション結果。V1とV2が不安定で、出力を止めるとバランスするのに数秒かかることがわかる。
時間軸を拡大。V1とV2が揺れている。これは最大出力を抑える方向に働くが、時間遅れがあるのでもっと複雑な動作になるかもしれない。
C1とC2を1000uFまで増やしてみた。V1とV2の揺れは小さくなるが、出力を止めるとバランスするのに時間がさらにかかる。C1とC2のフィッティングは実験で行ったほうが良いかもしれない。
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ちなみにミニオフ会前にDCバランスを合わせ、終わった後にカソードのアンバランス電流を測ったところ、カソード抵抗390Ωの両端で約10mV〜15mVと殆ど狂っていなかった。アンバランス電流は0.026mA〜0.038mAとなりSG電流のバラツキや抵抗(5%)の誤差の方が大きい。
DCアンバランス電流を0mA〜2mAで変えながら100Hzでの歪率特性を測定してみた。アンバランス電流が2mAでも歪率特性の悪化が少なく、PCL83 CSPPアンプにおける自動DCバランスは導入不要というか、導入により起こりうる副作用のほうが大きいと思われる。