71Aパラシングルアンプと45シングルアンプ2号機の改造で音が自分好みの方向へ変化したことから、VT-62シングルアンプも同様な改造を行うことにした。
改造前に聴いてみるとやはり音色が穏やかな感じでVT-62の実力を出し切っていないように思える。カソード〜+B間に入っている、信号ショートループと呼んでいるコンデンサを通常のカソードバイパスに変更する。
改造する回路図を上記に示す。赤が変更するところ。C4を+BからGNDにつなぎ替えて容量を1000uFに増加。低域のクロストーク悪化が予想されるので+BのリプルフィルタFETを出力インピーダンスの低い2SK3234に変更する。初段のデカップリングは+B1のリプルフィルタが入っているので入れなかった。
改造後のシャーシ内部。銀色のコンデンサが東信工業のUTSJ、1000uF50V。改造後に電圧測定を行ったが同様だった。
諸特性を測定。周波数特性の低域の低下が多くなっている。他は同様。
周波数特性。50Hz以下で低下が多くなっている。高域は一緒だった。これは信号ショートループコンデンサのキャパシタンスとOPTの1次インダクタンスによる共振が無くなったためと思われる。
クロストーク特性。予想どおり100Hz以下の周波数でクロストークの悪化が見られるが許容範囲か。高域は逆に良くなった。20Hz〜20kHzでは20Hzがリミットして-60dB以下。
Lchの歪率特性。改造前後で同じだった。1kHzにおける歪率5%での出力は3.7Wだった。
Rchの歪率特性。改造前後で同じだった。1kHzにおける歪率5%での出力は3.7Wだった。
出力段の信号ショートループを通常のカソードバイパスに変更すると信号のループがGND経由で電源部を通るようになる。おそらく電源部の出力インピーダンスがクロストーク(特に低域)に影響していると思われるがよくわからない。
試聴結果はコンデンサがエージングされるにつれオールマイティでクリアな音色に変化した。低音がモリモリ出るので一般に送信管で想像される音色とは異なっている。DFは4.4あるしダブついた低音ではない。71Aパラシングルアンプ・45シングルアンプ2号機・VT-62シングルアンプに共通の音色が感じられる。
理論先行で特性の良いアンプの回路を決めてしまうと自分好みでなかった場合そういう音のするアンプだと誤判断する恐れがある。私は全段差動で遠回りしたし、今回も同じことが起きているのかもしれない。