45シングルアンプ・リニューアル版が完成した。電圧増幅段がFET-Trのカスコード・エミッタフォロアの直結アンプは何作目になるのか、直熱管ではSG-205・4P1L・71A・5A6についで5作目となる。
電圧増幅段が皆同じだから音色も似ており殆ど区別がつかない。しいて言えばOPTが違うので、OPTの違いを聴き分けているといっても過言ではない。まあこの音色が好きなので構わない。ハードでダイナミックでシャープに切れ込むサウンドとは180度異なるから、そういうのが好きな人は近寄らないほうが良い。
リニューアル版を製作しようと思ったきっかけは、45のAC点火だとハムバランサを回してもハムが減らないタマがあり、そういうのを仲間外れにしたくないからだった。本機では降圧DCDCによりフィラメントをDC点火している。DCDCを使うとスイッチングノイズが取り切れないことがあり、人間の耳には聞こえなくても測定器には聞こえるので良くない。LCフィルタを2段通すことで残留ノイズは0.16mVに抑えることができた。
本機の回路図を上記に示す。アンプ部の回路はいつも採用しているカスコードエミッタフォロアで45をダイレクトにドライブする、軽いA2級となっている。
電源部は直結のため+B電圧を高くする必要があり、AC6.3Vを4倍圧整流して加えている。フィラメント電源にはSBDによるブリッジ整流を採用したが、普通のシリコンダイオードでも構わない。降圧DCDCはaitendoのDC243ADJで1.8V・2.5V・3.3V・5V・9V・12V・可変を選ぶことができ、最大出力電流は3A。高効率を謳っているので発熱は少ないんじゃなかろうか。スイッチング周波数は500kHzとなっている。
本機のレイアウト図を上記に示す。シンメトリーで使うタマは45が2本だけ。タマが多いほうが見栄えがするが、リニューアル前は電圧増幅段に傍熱管を使ったので直結のためには+B電源に傍熱整流管を使う必要があった。リニューアル版は前段が半導体のためそういった配慮が不要になった。
中央上のトランスケースはフィラメント電源で、降圧DCDCが2つ入っている。スイッチングノイズを鉄ケースに封じ込めようという考えなのだが、いささかオーバーであったかもしれない。このトランスケースは電源トランスを外さないとカバーが取れないので、DCDCが故障すると面倒なことになる。
穴加工と塗装の終わったシャーシと裏蓋。シャーシは(株)奥澤のアルミでO-45、W300mm×D170mm×H50mmのt1.5mm。これをいつものダークグレーマイカメタリックにスプレー塗装した。
諸特性を上記に示す。軽いA2級で使って出力は2.5W。周波数特性はOPTのOPT-S14の特性で高域が伸びないが、NFBをかけても安定しており高域補正は行わなかった。詳細な特性はこちらを参照。
Analog Discoveryによる周波数特性。2個のOPTの特性が揃っている。高域のアバレより特性が揃っている(位相が一致)ほうが大事だと思う。
歪率特性。1kHzで歪みの打ち消しがされて低歪みとなっている。
いろんな角度からブツ撮りをしたのでご披露。いつも同じだから違うアンプ画像を掲載しても判別がつかないに違いない。
サイドにはアクリル板をネジで固定。
この45の優雅な姿が良い。
シャーシ内部。中央はフィラメント電源用のブリッジダイオード。+B電源部の400V100μFの背が高いので、頭にビニールテープを貼った。
駄耳の私による試聴結果。OPT-S14の出力容量が6W程度あるせいか、余裕のある低音が出ている。女性ボーカルの声に艶が乗る。雑味がなくて澄んだ感じがする。総じて穏やかな音色で音場感に優れ、クラシック向きのように思う。