じつはある方から真空管アンプの製作を依頼された。それはPEN45を3結で使ったシングルアンプだ。
PEN45は欧州のビーム管でヒーターは4V1.75A。Epmaxは250V、Eg2maxも250V、Ppmaxは10Wとなっている。ソケットは欧州マツダ独自のロンドンオクタルソケットないしブリティッシュオクタルソケットで、通常のオクタルソケットとは異なる。
PEN45が欧州球なので、電圧増幅段も欧州球のCV1056で揃えた。CV1056はEF39と同特性でヒーターは6.3V0.2A。トップにG1が出ている。EF37Aと同じかどうかはわからない。
OPTは依頼者から支給された染谷電子のA66-57K8SAで、出力容量5W、1次インピーダンスは5kΩと7kΩ、2次インピーダンス8Ω、1次許容DC電流65mAの仕様だ。重量は1090g。
回路図を上記に示す。電圧増幅段はCV1056を5結で使い、電力増幅段はPEN45を3結としている。電源トランスはPEN45のヒーターが4Vということもあり、西崎電機に特注した。+B電源にはFETリプルフィルタを使用し低インピーダンスの電源とする。
諸特性を上記に示す。オーバーオールNFBを6.3~6.5dBかけている。出力は1.5W~1.6W。DFは4.4となった。
Analog Discoveryによる周波数特性。高域は伸びていないが素直に落ちていっている。
クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-64dB以下となった。高域で殆ど悪化が見られない。
Lchの歪率特性。弓なりで各周波数が揃っている。
Rchの歪率特性。Lchと同様だがRchのほうが低歪み。
使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E14 OS Windows11 Home 22H2
本機のレイアウトを上記に示す。真空管を一列に並べ、後列にトランスをオーソドックスに配置した。電源トランス前にはブロック電解コンデンサを置いた。
アルミシャーシは株式会社奥澤のO-45で、W300mm×D170mm×H50mm、厚みは1.5mm。自分で穴開けした後、ホワイトパールで塗装した。ホワイトパールは上塗りと下塗りに分かれている。塗装後に磨き仕上げとした。
今回もブツ撮りしたので掲載する。
CV1056の赤、トランスは黒、シャーシは白で彩りが美しい(自画自賛!)。
真空管のヒーターは上から覗かないと赤熱している様子が見えない。PEN45はプレートが管の上部にあり、シャーシに熱が伝わらない。だからシャーシの温度上昇が少なく発熱するのは電源トランスだ。
染谷電子のOPTにはこのように後部から配線の引き出しがあり、好みが分かれると思う。ただ正面からは見えないので気にならない。
シャーシ内部。大きめのシャーシにゆったり配置、ソケット周りにCRを取付けたので素子が少なく見える。+B電源に平ラグでなく立ラグを使って統一したら手配線ぽくなったと思う。
このアンプの試聴結果は鮮烈で瑞々しいといった印象。依頼者さんのご自分の耳で確かめて欲しい。クリアだが音色に暖かさを感じる。低域まで伸びた特性なのでスケール感に優れる。音色が自分好みに仕上がった。自分でも1台欲しい。