おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

甦ったEL32差動ppアンプ

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またまた久しぶりに引っ張り出してきたEL32差動ppアンプ。自分のスキルが向上したらきっと何か良い解決法が見つかるだろうと解体せずにそのままになっている。

 

このアンプは特性的には優等生なのだが、いつも沈着冷静でポーカーフェイス、もっと楽しめよ〜と励ましてみても結局のところ本質的にはとうとう変わらなかった。

 

そこで、前から気になっていた出力管のIpを増やしてみた。具体的にはカソードに入っている定電流回路の抵抗を160Ωから108Ωに減らして1本の管あたり19mAから29mAとした。+Bは20V以上低下したが、定電圧回路でないから仕方ない。

 

試聴結果はどうなったか。やっぱり変わらなかった。妻にも聴いてもらったが「普通の音」という感想だった。「喫茶店とかで静かに鳴らすのならいいけど。」

 

このつまらない音の原因は何なのか。仮説を立ててみた。

(1) 出力管(EL32)はプッシュプルと相性が良くない。

(2) 出力トランス(TANGO FE-25-8)が高級すぎて、私の駄耳と合わない(笑)。

(3) 差動回路(特に出力段)が私の聴くジャンルの音楽(ラテン音楽)と合わない。

 

まあ、思いつくことを挙げてみてももぐら叩きと一緒で外れまくり、ということがあるだろう。

(1)は他の管で試してみる方法がある。(2)は大掛かりになる。

 

結構ていねいに作ったつもりで愛着もあるし、何とかならないものだろうか・・・

 

そうだ、(3)の出力段の差動をやめて、通常のDEPPにしたらどうかなあ?

 

具体的には出力段のカソードをコンデンサでアースすると、DEPPに変身する。

 

とりあえず手持ちの1000μF63Vのコンデンサを入れてみた。(回路図を下に示す。丸印が変更した個所。)

 

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試聴してみておやっと思った。あれれ、なのだ。

 

ボーカルが際立って良く聞こえるのである。全体の冷ややかな感じが後退し、声がツヤを伴って良く聞き取れるのである。このアンプで聴くラテン音楽がまるで生き返ったようだ。

 

これは!

 

もしかして化けた?

 

何しろ私は駄耳であるから、妻には何も知らせないで聴いてもらった。結果は自分と同じだった。「全然ちがう。

 

差動を止めたらこんなに良くなるの??? 2日ほど聴き込んでみたが、印象は変わらなかった。聴くのが楽しくて仕方ない。

 

こんなことを書くと、全日本差動アンプ連盟(そんなのあるのか笑)から石が飛んでくるに違いない。何しろ出力段の信号ループに電解コンデンサが2個も通っているし、出力トランスで波形の合成が行われているのである。

 

でも本当なんだから仕方ない。

 

きっと差動アンプの持つ静けさ、定位感の良さは後退しているに違いない。でも、それらを失うよりはるかにアンプが「唄って」いるのだ。

とにかくこのアンプを生かす方法が見つかって良かった。

 

このアンプは、EL32が元々5極管なのを3結にした差動回路だし、コンデンサを入れた後はカソードに定電流回路が入っているDEPPだから純粋なDEPPとは言えないと思う。

 

本来ならば、コンデンサを外してみて元の音に戻るかどうかの検証をしなければならない。でも、これだけ良い方向に変わってしまうと戻したくないのがホンネなのだ。

 

きっとこれを読んだ方はウソだろう、と思うに違いない。だから、眉にツバをつけながら読んでね(笑)。それでももし、ご自身の作られた差動アンプがいまいちだな、と感じたら、こんな方法もあるのだと思い出してほしい。

 

コンデンサ2個でできるし簡単だから。