以前45シングルアンプに2A3を挿してみたら意外に音が好みだったので、この際2A3シングルアンプに改造してしまおうと考えた。出力が倍増するし。
出力トランスXE-20Sのインピーダンスを2.5KΩ:8Ωに変更し、カソード定電流回路を60mAに設定したら+Bが下がりすぎたので5AR4とコンデンサの間に入っている保護抵抗51Ωを外したら、2A3がほぼ標準動作の動作点となった。
ところがハムバランスを取ろうと残留ノイズを調べたら40mV近くもある。SP出力にオシロをつないで波形観測すると約400KHzで発振している。
ボリューム最小で発振するが、上げていくと発振は止む。5687の初段グリッドには4.7KΩが直列に入っているが2段目には無いので、同様に5.1KΩの抵抗を入れてみたが発振は収まらない。
また、SP出力をオープンにして入力に1KHzを入れてみたらAM変調がかかっていた(笑)。アンテナをつなげば送信機だ。 SP出力にはスナバを入れてあるが効かないんだね。
仕方がないので初段グリッドに100pFを入れたらようやく発振が止まった。なお、NFB抵抗と並列に入っている微分補正コンデンサを増やしてもダメだった。
なんだかんだで回路は以下のようになった。
次にロードラインを引いてみた。
出力トランスのインピーダンスを3.5KΩにしたほうが出力は増える。でも実際は大差なく、試聴してみたら低音に不満が残ったので結局2.5KΩにした。
MS-160の+B、280Vを320Vへ変更し、電流を増やしてプレート損失を20Wまで上げたら面白そうだが、2A3を壊したら元も子もないのでやらない(笑)。電解コンデンサの耐圧も上げないとできないからね。
2A3に換装してから諸特性を測ってみた。周波数特性の低域は明らかに45の時よりも伸びた。高域は伸ばしすぎのような気もする。出力は倍増して4Wになった。残留ノイズはミリボルの針がピクピク動いてわかりにくいが、ハムバランサを調節して0.2mV程度に収まっている。
周波数特性。120KHzにある小ピークが発振を起こす元凶だろう。入力に100pFを入れたためかピークとはならずに収まっている。
クロストーク特性。まるでバスタブカーブだね。低域の悪化は+Bのリプルフィルタコンデンサのインピーダンス上昇によるもの。
歪率特性。100Hz、1KHz、10KHzの各カーブが見事に重なっている。歪率5%での出力は4Wといったところ。
試聴結果はやっぱり出力トランスが高級だからねぇ(笑)。細かい音が良く出るし、何よりも音が良く飛ぶ。出力も余裕がある。物量投入機だからこれくらい鳴ってくれないと困るよ。
この改造で、製作を予定していた6B4Gシングルアンプが競合することになってしまった。初段と出力段を直結にしたシンプルなアンプというコンセプトなのだが、果たして作って意義は見いだせるだろうか。