続いて5A6 CSPPアンプの詳細な特性測定。まだNFBはかけていない。
歪率5%での出力は3.5Wとなった。オシロの読みに対して低くなってしまった理由は後述する。
周波数特性。1MHzまでほとんど凸凹がない、良い特性。Lchの150KHz付近にわずかなうねりがある。
Lchの歪率特性。レ点みたいなカーブを描いている。各周波数で歪率の違いがほとんどなく、曲線が重なっている。歪率カーブが直線的に増加していてオシロで見た時の歪みがわかりにくく、差が出てしまう原因になっている。5%歪率での出力は3.5W。
Rchの歪率特性。こちらのほうが各周波数で歪率が一致している。
クロストーク特性。20KHzでR→Lのクロストークが-59dBと悪くなっており、周波数が高くなるにつれさらに低下している。このカーブ、どっかで見たような?
それはミニワッターCIRCLOTRONアンプのクロストーク特性だった。このクロストーク悪化はフローティング電源の電源トランス巻線を介した容量結合によるもので、左右の巻線間に静電シールドを入れることで解決している。
本機の回路図を上に示す。マッキントッシュタイプCSPPなので、5A6のカソード(フィラメント)はそれぞれAC的に高インピーダンスとなっており、電源トランスのフィラメント巻線間容量によってクロストークが発生してしまう。これを避けるためにはフィラメント電源を左右チャンネルで容量結合しないように分離してやる必要がある。
CIRCLOTRONアンプで経験したことを生かせずにまたミスをやってしまった。これはカソードが高インピーダンスになる、直熱管差動プッシュプルでも起こりうる。傍熱管差動プッシュプルでクロストークの問題が生じないのは、ヒーター電源がアース、あるいはAC的にGNDへ落ちるから。
(2013.10.7追記)
差動プッシュプルにおけるカソード電圧の変動は、主に出力管の非直線性によっておこるためその値が小さく、(直熱管での)クロストークが問題にならないのではないかと思われる。
(追記ここまで)
回避策としては、片チャンネル分のヒータートランスを別に用意するのが良さそうに思えるのだが…せっかく電源トランスを特注したのにね。あるいは普通のDEPPにすれば、カソードはAC的にGNDへ落ちるから問題を回避できる。
クロストーク特性なんて測定しなきゃよかったんだよな。知らずに「なんて素晴らしい!」などと感心してれば問題なかったんだ。でも一旦気づいてしまうと音楽が安心して聴いていられなくなる。