3結のシングルアンプにツェナーが入れてあるのを見ないのはなぜだろうか。普通に考えると、ツェナーはアバランシェ降伏によりノイズが発生するため雑音が増えてしまうはず。スクリーングリッドとはいえグリッドにツェナーを入れるなんてとんでもない!
拙17JZ8 CSPPアンプやPCL83 CSPPアンプは5結だがスクリーングリッドにツェナーを入れて降圧しており残留ノイズが問題になることはない。でも3結はどうだろう?
というわけで、拙EL32シングルアンプを実験台に、スクリーングリッドにツェナーを入れたらどうなるのか確かめてみることにした。
EL32シングルアンプの回路を上記に示す。スクリーングリッドに入っている抵抗R6はパラスチック発振防止のため。これを外してツェナーを入れることにした。
回路的にはこんなふうになる。
実験風景。 ツェナーには16Vの1N4745Aと75Vの1N5374BGを使用した。まずはツェナーを入れない状態での残留ノイズは0.15mVだった。
それぞれ100Ω、ツェナーを入れた場合の電圧・電流、残留ノイズを測定した。結果は上記に示すとおり、残留ノイズは0.15mVのまま変わらなかった。ツェナーによる降圧が大きくなることでIsgが減り、Ipも減っている。
1N4745Aを入れた時の10KHz方形波を示す。上がツェナー有り(Lch)、下が100Ω(Rch)。波形に異常発振や違いは見られない。サイン波形も同じだったので省略。
1N5374BGを入れた時の10KHz方形波を示す。上がツェナー有り(Lch)、下が100Ω(Rch)。やはり波形に違いは見られない。
今回の実験では残留ノイズの増加や異常発振などの問題は起こらなかった。EL32はスクリーングリッドの感度が低いのかもしれないし、他の真空管で試してみたら何か問題が起こるのかもしれない。
これを例えば最高スクリーングリッド電圧の低い水平出力管で適用したら、3結でもプレート電圧よりスクリーングリッド電圧を下げることができるのではなかろうか。