このアンプを製作しようと思ったきっかけはミニオフ会だった。会場が広く、かつ音が抜けてしまうので、出力の大きいアンプが有利になる。
音質が良いアンプとしてはCSPPアンプがある。出力10WのCSPPアンプなら手持ちにあるので15W程度を目標にしたい。これに見合った出力管には6L6GCがある。調べてみると6L6GB相当でロシア管の6P3Sが安価に売られていることがわかった。
5kΩのOPTを使うとして、6P3Sの特性図にEb=275Vのロードラインを引いてみると出力は16Wと計算された。これなら実現可能だろう。
出力管のドライブ方法として、6550 CSPPアンプで使わなかったプレートチョークKL10-05があるのでチョークドライブを考えた。ドライブ管は同じくロシアの6N23Pとした。
本機の回路図を上記に示す。17JZ8 CSPPアンプを解体し、OPTはASTR-20、電源トランスはPMC-190Mを再利用した。アンプ部は初段がFETの差動で3段アンプの構成とした。
電源部はPMC-190Mだと+B電圧が低いので、ヒーター端子の6.3V+5Vを倍電圧整流して嵩上げした。LTspiceでシミュレーションしたら、FETリプルフィルタの前に嵩上げしたほうが残留リプルが低くなったので上記の電源回路となった。
アンプのレイアウト図を上記に示す。シャーシは奥澤O-40(W330mm×D220mm×H50mm t1.5mm)のアルミシャーシにした。シンメトリー配置とし、プレートチョークはトランスケースへ入れることにした。すこし大きめでゆったり配置となった。
プレートチョークを入れるトランスケース。W60mm×D60mm×H90mmでt1.6mmの鋼板製。
塗装のクリアの仕上げでマットのスプレーを使ったら磨きをかけても綺麗に光沢が出ず、結局マット仕上げとした。
製作当初は6P3Sのプレート電流を20mA程度にケチったら、出力を上げるとクロスオーバー歪みが出てしまい、カソード抵抗を低くしてプレート電流を31mAまで増やした。これでも最大プレート損失20Wに対し8.4Wなので軽い動作になっている。また裸利得が66倍程度と多いので、初段FETのソースに入っている抵抗を見直して電流帰還をかけ、裸利得を46倍まで減らした。
諸特性を測定。総合利得は14.7倍(23.3dB)でNFB量は9.9dBとした。出力は15.1Wで目標を達成。出力管のヒーターはH-K耐圧が低いためフローティングとなっているが、残留ノイズは60〜70μVと低く抑えることができた。詳細な特性はこちらを参照。
6P3Sを4本、前面に並べたので目立っている。電源トランスより背が高いので落とし込みにしたほうが良かったかもしれない。
シャーシサイドには合わせ目を隠すためアクリルパネルを貼り付けた。
シンメトリーなのでどちらから見ても同じ。
シャーシ内部。大きめのシャーシを使ったせいか案外閑散としている。中央の平ラグは電源部で、リプルフィルタのFETをシャーシに固定して放熱している。シャーシ内には殆ど発熱するパーツがない。
駄耳の私による試聴結果を書いておくと、音色に優雅さがあってこれが躍動感と評するものなのかもと思っている。6N23Pのプレートチョークドライブで音色づけがなされているのだろう。出力に余裕があるのでスケール感も十分。音を繊細に聴かせるという感じではないので、音楽を聴くより音を聞き分けるほうが重要と考える人には不向きといえる。