このアンプは2010年に製作したものでもう10年経っている。電圧増幅段に6922の2ユニットをSRPPとし、出力段には6N6Pの2ユニットをパラレルとしたミニワッターだ。直結にしてカップリングコンデンサを省いている。
回路図を上記に示す。+BにはFETリプルフィルタを採用している。C3は信号ショートループと呼ばれているもので、カソードバイパスコンデンサでなく+BにつないでC3〜OPT〜6N6Pという信号のループを成している。このコンデンサにより+Bのリプルが6N6Pのカソードに注入されるので残留ノイズは不利だ。+Bに1H程度のチョークコイルと100μFのコンデンサでLCフィルタを追加すると残留ノイズが低減することがわかっている。
諸特性を上記に示す。周波数特性での高域-3dB点が55kHzと低めなのはOPTによるものと思われる。1kHzにおける歪率5%の出力は0.9Wとミニだがニアフィールドで聴く限り十分だ。
利得は5.1倍と私が製作するアンプでは低めだが、電圧増幅段の6922を12AX7もしくは6N2Pに変更し、カソード抵抗とNFB抵抗を見直せばもっと増やせるはず。
周波数特性。超低域がすこし盛り上がっているのは信号ショートループのコンデンサとOPTのインダクタンスによる共振だ。この共振がミニワッターならではのスケール感に影響している可能性がある。200kHzの高域まで素直に落ちていっているのでNFBが良好にかかるはず。
クロストーク特性。20Hz〜20kHzでは-66dB以下となっている。
Lchの歪率特性。カーブが直線状となっている。歪みが多めという印象だが、2次歪み主体で聴感上は気にならないというか、歪みを意識することはない。
Rchの歪率特性。Lchと同じ傾向で各周波数で特性が揃っている。
アンプのブツ撮りをしたので掲載する。アクリルのフロントパネルを取り付けてシャーシの合わせ目を隠している。
サイドウッドを取り付けた。私の近年の作例ではアクリルパネルが多いが、サイドウッドは塗装が乾くのに時間がかかる。
銘板を付けてあるが、もともと電源回路の放熱用に穴が開いていた。デザイン的に気に入らなかったのでふさいでしまった。
真空管を一直線に配置してある。真正面から見ると先頭の6922しか見えない。
6922はエレクトロハーモニクスで6N6Pと合わせて真空管をロシア製で統一した。
銘板のところにチョークコイルを乗せればデザイン的に良くなると思う。
シャーシ内部。この頃はOPTの2次配線やヒーター配線に太い線材を使っていた。近年はAWG24の細い配線を多用している。
音色はワイドレンジでクリアといった印象。このアンプは増幅部に半導体を使っていないので、そういうのが好きな人には良いかもしれない。電源部も整流管じゃなきゃ嫌だという人はそうすればいいし、半導体リプルフィルタをやめてチョークコイルとコンデンサにすれば良いと思う。