42プッシュプルアンプを製作しようと思ったのは、42の3結でシングルアンプを作ったら自分好みの音色だったからで、それをプッシュプルにすれば出力増と低域の充実が図れるに違いないと考えた。
見積もってみると3結のA1級では3W程度の出力しか見込めないことがわかった。やはりグリッドをプラスに振ってA2級にしないと出力が取れない。そこで3極管のカソードフォロア直結でドライブしようと思った。
試作機を製作したところ、DEPPでの出力は6.5W得られた。ただ試聴を続けていくと音場の奥行きの表現に乏しいようだ。そこで出力段を差動に改造し、小容量のカソードバイパスコンデンサを付加することで、艶のある音色と優れた音場感を両立することができた。
回路図を上記に示す。初段はFETとE88CCをカスコード差動回路とし、6N1Pのカソードフォロアで42を直結ドライブする。当初DEPPだったのを改造したこともあり、出力段は差動アンプとして最適化されていないが、電源トランスで取れる+B電流の制限もあってそのままとした。
諸特性を上記に示す。出力は5W~5.5Wで拙宅では十分。NFBは8dBかけている。DFは3.5と低めだが実用上は問題ない。詳細な特性はこちら。
SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが発振には至らなかった。(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div[プローブ10:1]、20μS/div)
シャーシは株式会社奥澤のアルミシャーシ(O-40・W330mm×D220mm×H50mm・t1.5mm)を加工し、ダークグレーマイカメタリックで塗装した。
いつものようにブツ撮りをしたので掲載する。
レイアウトはオーソドックスな配置とした。左のブロック電解コンデンサはJJの黒いものを使ったほうが目立たなくてよかったのかもしれない。
アンプの音色は初段に使用しているTESLAのE88CCが支配的なんじゃないかなあ?
シャーシサイドにははざいやにカットして頂いたアクリル板をネジ止めしてある。
OPTはサンスイのH10-10で、角に丸みのあるスタイルがマッチしていると思う。古いトランスだが高域特性は素直だし、繊細な音が出せることがわかった。
シャーシ内部。MTソケット周りのフロントパネル側が込み入ってしまった。
駄耳の私による試聴では、クリアで透明度が高く、音場が奥にも展開する。低音は馬力があってスケール感に優れ、女性ボーカルにも艶が乗る。差動アンプの定位の良さや音場感、DEPPの艶やかさのいいとこ取りといった印象。