おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

89Yシングルアンプ・完成

さて、今回は89である。89はトリプルグリッド電力増幅管で、1Gと2Gを繋ぎ、3Gをカソードに繋ぐとB級pp用、2Gと3Gをプレートに繋ぐとA1シングル(3結)用となる。

89と89Yの違いはわからない。89は41や6K6の前身で、6F6族の古典管だ。トップにG1が出ている。ベースはUZで、42などと同じ。

89Yを入手したのはずいぶん前で、アンプに組んで聴いてみようと思っていたのだが、後回しにしてしまいなかなか実現しなかった。今回、6Z-P1シングルアンプに挿して聴いてみようと思い立った。ベースは同じUZだし、簡単な接続変更で聴くことができる。

聴き込むと透明感のある、粒立ちの良い音色となった。こんなサウンドはあまり記憶になく、アンプに仕立ててみようと思った。

89の3結に7kΩのロードラインを引いてみた。3結のEp-Ip特性図は高間氏のデータ集から引用。カットオフのグリッド電圧が深く、電圧増幅段と出力段を直結にした場合、グリッドのDC電圧は90Vくらい必要。そうすると+B電圧との兼ね合いで実効プレート電圧が低くなってしまう。電圧増幅段でフルにドライブできなくてもいいから80Vくらいに抑えたい。

OPTの1次インピーダンスが7kΩなのは6922パラシングルアンプを解体してトランスを再利用したため。同様に電源トランスはPMC-95Mを再利用する。

本機の回路図を上記に示す。電圧増幅段はFET-Trカスコードで、Trのエミッタフォロアで出力管のG1をダイレクトにドライブする。+Bをできるだけ高くしたいため、電源トランスの140V-0-140Vのタップに6.3Vを直列にした。電源部にチョークが使われているのは、FETリプルフィルタに入力するまでにリプルを極力減らしたいため。残留ノイズが少々増えても構わないのならチョークを省略できる。

なお89YのG3がカソードに接続されているのは通常の5極管の3結と同様にしたかったため。

諸特性を上記に示す。出力は1.6W~1.7Wで、計算上の出力と一致した。OPTの損失を考えても同じなのは、設計でのグリッドのプラス電圧がより高くドライブできているからと思われる。DFは4.2~4.4と実用上はOK。残留ノイズは0.08mVと低くなった。

使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E470 OS Windows10 Home

NFBをかけた最終的な周波数特性。100kHz付近に少々凸凹があるものの左右チャンネルでよく揃っている。

クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-75dB以下となっている。

Lchの歪率特性。2次歪み主体の直線状となった。1kHzの歪率5%における出力は1.7W。

Rchの歪率特性。Lch同様のカーブを描いている。1kHzの歪率5%における出力は1.6W。

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(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div(プローブ10:1)、20μS/div)

SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが、リンギングはあるものの安定している。

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レイアウトを上記に示す。シャーシはWATZのS-254、W250mm×D150mm×H40mmのアルミでt=1.0mm。シンメトリー配置で、電源トランスとOPTは誘導ハムが低くなる位置にした。チョークコイルは電源トランスの前に置いたが、いちばん目立つ位置にチョークコイルというのはどうかなという気がする。電源トランスとチョークコイルの前後位置を入れ替えてもよかった。

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穴開けは自分で行った。スプレー塗装で色はダークグレーマイカメタリック、磨き仕上げとした。

さて、いつものようにブツ撮りをしたのでご紹介。今回はレンズに中古のEFS55-250mm F4-5.6 IS STMを使用。これは実質自分への誕生日プレゼントとなった。ボディはCanon EOS Kiss X7。

 

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シャーシ内部。上部の電解コンデンサは振動しやすいのでボンドで固定してある。LchのRCA端子からのシールド線の取り回しをどうしようかと考えたが、結局画像のようにした。左右チャンネルで残留ノイズの差が出なかったのは幸いだった。OPTの配線穴は、配線を4本しか出さないし、こんなに大きくする必要はなかった。

駄耳の私による試聴結果。せっかく古(いにしえ)の真空管を使うのだから、真空管でないと出せない音色がいい。その音色が自分好みであれば尚の事。果たして粒立ちが良く透明度感のある音が出ている。案外しっとりしており、これはOPTによるものと考えている。低音にボリュームがあって、これも89Yの特徴と思われる。

 

(2023.03.11追記)

真空管RCAの89YからPHILCOの89に変更、更にグリッドキャップを黒のものに変更したので目立たなくなった。黒一色になったが、このほうがシックで良いと思う。

(追記ここまで)