ある方から真空管アンプの製作依頼があった。内容は89シングルアンプをメインとし、38も使えるようにして欲しいとのこと。そこで89(UZ)をベースとし、38(UY)は変換ソケットを使うことにした。
回路図を上記に示す。拙89Yシングルアンプとほぼ同じ回路となっている。電圧増幅段はFET-Trのカスコードでエミッタフォロアを加えたもの。89の第1グリッドを直結でドライブする軽いA2級だ。R2は当初半固定抵抗だったが、89を差し替えてもカソード電流のバラツキが少なく、通常の抵抗130Ωにした。
OPTは依頼者から支給されたエイトリックトランスフォーマーのPS-101で、出力容量10W、1次インピーダンスは0-3kΩ-5kΩ-7kΩ、2次4Ω-8Ω-16Ωの仕様だ。1次最大電流は75mAとなっている。
レイアウトはシンメトリー案とオーソドックス案を検討したが、電源トランスからOPTへの誘導ハムの影響を考えてオーソドックス案を採用した。シャーシは株式会社奥澤のO-46、W250mm×D160mm×H50mmでt1.5mmのアルミだ。
シャーシは自分で穴開けした。塗装はホンダのミラノレッドで磨き仕上げとした。赤は磨き傷が目立つので、よく見ると残っているが、シロートの塗装でもあるしご了承ください。
使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E470 OS Windows10 Home
諸特性を上記に示す。出力は1.6WでNFBは6dBとした。特性の詳細はこちらを参照。
Analog Discoveryによる周波数特性。40kHzにディップがあるが、両チャンネルで特性が揃っている。60kHz付近のピークは、6dB程度のNFBでは安定性に影響を与えないようで、結局位相補正は行わなかった。
歪率特性。2次歪みの多い直線状だが各周波数で曲線が揃っている。
さて、いつものようにブツ撮りをしたので掲載する。
シャーシ内部。100μF400Vの電解コンデンサはシャーシにボンドで固定してある。
平ラグパターンとソケット周りの配線、カソードCRを描いた図。
駄耳の私による試聴結果。OPTのエージングに時間がかかると思われたが、数日の試聴で良くなったように思う。スケール感があるのはOPTに出力の余裕があるせいだろうか。
89シングルアンプ
音色が瑞々しく感じられ、女性ボーカルがリアル。
38シングルアンプ
ナチュラルな音色で、なぜか音量が上がったように聴こえる。
以上は私の個人的な印象なので、依頼者さんの自分の耳で聴いて確かめて下さい。お気に召すことを期待します。
(2023.06.10追記)
依頼者さんから89シングルアンプの音の感想を頂けたので追記します。
音の方、正直ちょっとビックリですね。
こんなに低音出るんですね。
僕の大好きな濃厚なイメージの音で、高音が聞き疲れしない感じです。
(追記ここまで)