私がアンプを測定し公表している項目をまとめてみた。
あくまで測定データは自社比であり一般的に比較することは出来ないし意味がない。大体この程度ということがわかればいい。
測定器はすべからく校正されたものを使用すべきである、という人はサヨウナラ。真の実効値を示す測定器を使用すべきである、という人はサヨウナラ。0.001%台の歪率が大事、という人はサヨウナラ。
エラソーに書いているのはわざとそういう書き方をしているからであって、決して本心からではないのをご承知おきください。
アンプの特性測定時はデータをExcelに入力し管理している。グラフから測定を間違った場合すぐわかるので、その点を再測定することができる。
以下は測定したことのある人の閲覧を前提としており、初めて測定するためのやり方は解説していない。そういうことが知りたい人は、そういうことが書かれたWebをご覧ください。
私の場合、ひととおりの測定を終えるのに2時間程度かかっている。趣味なので時間がかかってもよしとしているが、効率化を図りたいとか、手軽に簡単にというアプローチも考えられるので、AnalogDiscoveryを導入するなどいろんな方法を考えてほしい。
測定機器
・オシレータ TEXIO AG-205、KIKUSUI model 417A
・ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
・オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
・アンプ測定治具 自作
測定項目は、
(1) 周波数特性
(2) 歪率特性
(3) クロストーク特性
(4) 利得
(5) ダンピングファクタ(ON/OFF法)
(6) 残留ノイズ
(7) 消費電力
など。 入出力特性はとらない。
というのは、信号が飽和して歪率が急に悪化する出力は歪率特性でわかるし、リニアに入出力が伸びていく領域では利得でわかるから。
アンプはこのようにこたつ板1枚に乗せて測定している。
オシレータTEXIO AG-205とミリボルトメータLEADER LMV-181B。
オーディオアナライザPanasonic VP-7721A。
(1) 周波数特性
必要な機器
・オシレータ
・ミリボルトメータ
・アンプ測定治具
オシレータはメインでAG-205を使っており、周波数特性は10Hz〜1MHzで測定している。必要に応じてKIKUSUIのmodel 417Aを使う。これは5Hz〜500KHzで使える。
通常は10,20,50,100,200,500,1000,2000,5000…Hzで測定するとlogの間隔がほぼ均等となる。
測定する前にオシレータで周波数をスイープしてピーク・ディップのある周波数を把握しておき、その周波数は必ず測定する。 真空管アンプでは数10KHz〜200KHzあたりにピークやディップが現れる場合が多く、この周波数を測定しないと意味がない。
測定電圧はアンプの出力により変更する。1W以下、ミニワッターでは1V(8Ω・125mW)が多い。数W級のアンプでは2.83V(8Ω・1W)が多い。
アンプの出力に比べて測定電圧を高くすると低域の落ち込みが早くなる。
(2) 歪率特性
必要な機器
・PC
・オシレータあるいはWaveGene、WaveSpectra
・アンプ測定治具
又は
・オーディオアナライザ
・アンプ測定治具
以前はPC測定でWaveGene・オシレータおよびWaveSpectraを使っていたが、入力レベルを適正に保つ必要があり測定するたびに調整するのが面倒なのでオーディオアナライザVP-7721Aへ移行した。
オーディオインターフェースに24bit96KHzのものを使う場合、10KHzの歪率測定は最高48KHzとなり3次高調波までしか測定できない。
私は0.001W(89mV・8Ω)から測定している。実際に聞いてみるとわかるが、0.001Wでもかなり音量が大きい。残留ノイズにより歪率(THD+N)は高くなるが傾向はわかる。
測定は0.001W(89mV),0.002W(0.126V),0.005W(0.2V),0.01W(0.283V)…という刻みで測定している。logの間隔がほぼ均等となる。
急激に歪む出力では測定の刻みを細かくしている。
(3) クロストーク特性
必要な機器
・オシレータ
・ミリボルトメータ
・アンプ測定治具
測定電圧は高いほうが数値上は良くなるが、周波数特性を調べる時と同じ程度にしたほうが良いと思う。そのほうが実際に聴いている状態に近くなるだろう。
測定は10Hz〜100KHzで行い、管理指標は20Hz〜20KHz。本来出力電圧一定で測定するのが好ましいが、レベルが低下する周波数では入力レベルを増やす必要がありクロストークがどんどん悪化する。
だから私の場合入力電圧一定で行い、20Hz〜20KHzを管理指標とし、20KHzより高い周波数では傾向を把握するだけに留めている。
2現象オシロのプローブを両チャンネルにつないだまま測定したらクロストーク特性が悪化した、という笑えない事例も存在する(私だけど)。
(4) 利得
必要な機器
・オシレータ
・ミリボルトメータ
・アンプ測定治具
オシレータの発振周波数は1KHzで測定している。 入出力がリニアな出力電圧で測定する。私の場合1V(8Ω・125mW)、2V(8Ω・0.5W)、2.83V(8Ω・1W)が多い。あまり小さい電圧ではノイズの影響を受けるし、アンプが飽和する電圧では利得が低くなってしまう。
(5) ダンピングファクタ(ON/OFF法)
必要な機器
・オシレータ
・ミリボルトメータ
・アンプ測定治具
ON/OFF法の他に注入法があるが、ON/OFF法しかやったことがない。ONの時の電圧を高くすると、OFFの時に飽和してしまうことがある(特にダンピングファクタの低いアンプの場合)。
半導体アンプは一般的にダンピングファクタが高く、ON/OFF法では誤差が大きくなってしまう。
(6) 残留ノイズ
必要な機器
・ミリボルトメータ
・アンプ測定治具
アンプ測定治具のほうで入力をGNDにショートするか、アンプのボリュームを最小に絞って測定する。
(7) 消費電力
必要な機器
・ミリボルトメータ
・アンプ測定治具
アンプ測定治具の8Ωダミーロードをアンプの1次AC100Vへ直列に入れ、その電圧を測定する。その波形を見るとサイン波とはかけ離れた形になっており、果たしてちゃんとrmsで測れているのかわからないが、ミリボルトメータあるいはDMMで電圧を測定する限り一致している。