前回SV811-10Aシングルアンプを製作したのだが、同様な回路でVT-62もいけるのでは、と考えた。VT-62は昔、SV-VT25Limitedの予備球として2本購入してあった。果たして2匹目のドジョウは居るだろうか?
VT-62はrpが高く、A1級では出力が出ないのでプレートに高電圧をかけ、OPTの1次インピーダンスを高く取る方法が用いられる。でもグリッドをプラスにも振るA2級では低電圧でも出力が取れる。
製作費用を抑えるため電源トランスにはノグチのPMC-100Mを用い、OPTにはアンディクスのOPT-S14を10KΩ:8Ωで使用した。
回路図を上記に示す。初段は6DN7のsection1とFETによるカスコード、6DN7のsection2をカソードフォロアでチョーク直結ドライブしている。6DN7の+B1は簡易安定化電源とした。これはVT-62のグリッド電流に対応するため。
フィラメント電源はAC6.3VをSBDでブリッジ整流しDC7.2Vを得ている。VT-62のカソード〜+B間に信号ショートループのコンデンサ、カソードバイパスには1uFのフィルムを入れている。前記は低域クロストーク悪化対策で、フィルムを入れているのは試聴結果が良かったから。
特性に関しては、詳細は本番機の特性測定をご参照。
歪率5%での出力は3.2Wだが110Hz以外では3.5W出ておりA2級の恩恵だ。OPTが実測18.5Hあるためか、低域での歪率悪化が少なくレベル低下も少ない。
現状の問題点として、電源オン後6DN7がヒートアップするまでに6秒程度、2〜3mVのノイズが出ること。レベルは低いがカソードフォロアが動作するまでVT-62につながったカソードチョークが雑音を拾うため。VT-62は自己バイアスなので、タイマーリレーでグリッドとチョークを切り離してグリッドをGNDに接地すればノイズは出なくなるはず。現状はノイズを無視しているが、もっと簡単な方法が見つかったら採用したい。
シャーシは奥澤O-45、W300×D170×H50 t1.5を使用。ダークグレーマイカメタリックのスプレー塗装、実質ブラックに見える。OPTのアンディクスOPT-S14にはサムテックのトランスケースTT0001を被せている。
中央の2本、6DN7はVT-62より前に出してあるのだが、こうして見ると横一列に並んでいるように見える。
VT-62の後ろに穴があって、それにドライバーを差し込んでハムバランス調整をする。でもVT-62を交換したらシャーシ内にあるバイアス調整ボリュームを回す必要があるので、ハムバランスをシャーシ上から調節できてもあまり意味がないかもしれない。
後ろから。電源トランスが前進しているのはシャーシ内に平ラグ基板を配置してあるため。
SP端子が縦になっているのは平ラグ基板との干渉を避けるため。でもすこしだけ干渉してしまったので、基板のほうを削って回避した。
いつものようにアクリルパネルを貼り付けた。こうするとシャーシのつなぎ目が見えなくなるお手軽な方法。
光っているVT-62。フィラメントが直接見えるところは白飛びしてしまっているが、実際には細いフィラメントが見える。
6DN7も上から覗くとヒーターが結構明るい。
シャーシ内部。6DN7の近傍にアンプ部、電源トランスの左右にフィラメント電源、電源トランスの後方には+B電源を配置している。写真を撮った時点ではカソードパスコンに1uFは無かったので写っていない。
私より耳の良い!?妻による試聴結果。
--------------------------------------------------
・音のバランスが良い
・ウェットでもドライでもなくちょうど良いところにまとまっている
・ボーカルがこもらずにすっきり聞こえた
・解像度が良い
・スケール感がある
--------------------------------------------------
VT-62などの送信管をA1級で使用すると出力が取れないし、無帰還ではDFが低くなってしまう。中高域の透明感とは裏腹に低域が寂しい結果となりかねない。カソードチョークによる直結ドライブで低い+B電圧でもA2級で出力増が可能になるし、カソードフォロアでも-C電圧が不要となる。本機では6dB程度のNFBをかけているが、DFは4.3〜4.4と実用レベルになっている。