おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

6AR5シングルアンプ・完成

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シャーシサイドにアクリルパネルを取り付け、電源トランスの養生テープやOPTのマスキングテープを剥がした。これで完成だ。大抵は特性評価如何で手直しが入るものだが、今回は全く手を加えずに完了した。

きっかけはもっと気負いなく真空管アンプを製作してみようと思ったことから始まる。ラジオ球である6AU6と6AR5を使ったミニアンプはどうか。但しデザインや仕上げには手を抜かない。かくして難しく作る入門アンプみたいになった。

6AR5は系譜をたどると6K6GTや41に行き着くようだ。以前これらのタマの音を聴いたことがあるが、同じ6F6属の42には及ばなかった。そこで6AR5シングルアンプの実験機を作って聴いてみたところ、自分好みの音がすることがわかった。

出力管を6AU6に替えてみると、出力は半減するものの音色の傾向は同じようだ。だから、6AR5シングルアンプの音色は6AU6が支配的であると思われる。

回路図を上記に示す。2段増幅で、電圧増幅段の6AU6は標準接続、電力増幅段の6AR5は3結としている。これはダンピングファクターを確保するためで、5結とすると無帰還で0.1程度にしかならず、NFBを多くかける必要があるから。

C4は信号ショートループと呼んでいるが、出力段の信号ループの経路を短くすることで音質向上を図ろうというもの。但し入力の信号ループは遠回りになる。私の経験では、傍熱管にこの回路がフィットし、直熱管は従来のカソードバイパスコンデンサとしてGNDに落としたほうが音質的に好結果が得られた。

+B電源部はFETリプルフィルタを使った回路とした。これは出力インピーダンスが数Ωとなり、左右チャンネル間のクロストーク低減に寄与する。経験的にクロストークを低減すると音場感の向上につながるので採用している。小さいチョークはアンプのデザインのために入れたもので省略可能。

半導体を使うのが嫌な人は従来のアプローチで整流管(ex.6CA4)とチョークを使ったLCフィルタを組めば良い。ただ本機はブリッジ整流なので、電源トランスを別のものに変更する必要がある。

諸特性を上記に示す。1kHzの歪率5%における出力は1.1Wが得られている。もしもっと出力が欲しければ6AR5を5結にすれば良い。データシートでは3.2Wとなっている。周波数特性の高域が伸びないのはOPTのT-1200が狭帯域だから。NFBをかけてダンピングファクタは4程度、残留ノイズは0.1mVとなった。

Analog Discoveryによる周波数特性。20Hz~20kHzはキープしている。左右チャンネルに特性の差が少ない。

クロストーク特性。入力ボリュームレスということもあるが、高域でも悪化が見られない。

Lchの歪率特性。各周波数で特性の差が少ない。カーブが直線状なのは2次歪みが主体であるため。

Rchの歪率特性。Lchと同様になった。

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(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div(プローブ10:1)、20μS/div)

SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが、リンギングはあるものの発振はしなかった。

使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E470 OS Windows10 Home

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本機のレイアウトを上記に示す。CADはSakraCADを使用。Windows11でも使える。

電源トランスと出力トランスを一列に並べたオーソドックスなもので、電源トランス前に小さなチョークコイルを置いている。+B電源の平ラグは電源トランスとOPTの間に置いたが、電源トランスとチョークコイルの間に置いたほうが良かったかもしれない。

アルミシャーシは株式会社奥澤のO-27(W250mm×D150mm×H40mm・t1.0mm)で、自分で穴開けした後、ダークグレーマイカメタリックで塗装し磨き仕上げとした。裏蓋は解体したアンプからの流用。

本機をブツ撮りしてみたので掲載する。

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OPTは鋼板の角パイプをカットしたもので、製作過程はココを参照。

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電源トランスとOPTの高さを揃えているのでカッコよく見える(自画自賛!)。

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斜めからの写真を撮ってみた。

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シャーシが歪んで見えたりするので地味に難しい。

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真空管ソケットは金属スペーサーで下付けにしている。

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https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/o/onnyo01/20230711/20230711215700_original.jpgシャーシサイドははざいやにカットしてもらったアクリル板を取り付けた。仕様はこんな感じ

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電源トランスのボルトにはウィルコのキャップボルトを使用。PMC-95MにはM4の55mm長が合う。

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後面の外装パーツは、トランス類のネジを固定する際、ドライバーに干渉しない位置にしている。

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シャーシ内部。真空管ソケット周りは立ラグを使った手配線としている。6AU6周りは込み入っているのでCRの取り付けには順番を意識する必要がある。熱に弱いコンデンサはソケットのピンに直接ハンダ付けせず、立ラグを介している。

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実体図もどきを作成し、それに倣って配線やCRを取り付けた。シャーシ内部画像と向きが逆なのはご了承のほどを。

+B電源部の平ラグパターン。FETの2SK3234は平ラグのスペーサーに固定してシャーシに放熱させている。

 

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駄耳の私による3階自室での試聴結果。曲調で音色が変化する。優しい曲は優しく、メリハリのある曲はメリハリのあるサウンドに。女性ボーカルの声音も良い。オーディオ球でなくてもラジオ球でこんな音が出るとは思わなかった。とにかく自分で聴いてみなくちゃわからない。

6AU6や6AR5のような駄球で好みの音が出てしまうと、今まで銘球でアンプを製作してきたのは何だったかと思う。これで十分じゃないかと。そう音色なんて違わないし。